大切なことはすべて○○が教えてくれたと自信を持って言える人がいるのなら、その人はたぶん何か大切なことを忘れている

 タイトルで書きたいことを書ききった感があるので、「私はそう感じている」というだけのことだと記しておく。

 そして、テレビドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』は、好きな作品ではないが傑作だと思う。そういうこともよくある。

大切なことはすべて君が教えてくれた [DVD]

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  • 発売日: 2011/07/22
  • メディア: DVD
 

 

あの日のカート・ラッセルとマーティン・ショートは大塚明夫と山寺宏一だった

 カート・ラッセル主演の『キャプテン・ロン』というコメディ映画がある。そのなかでラッセルが「ジャングルの中にはゴリラが出るぞ」とマーティン・ショートに忠告するが実際に出たのはゲリラだったというシーンがあった。

 この映画を観たのは、まだ小学校低学年の頃で、TSUTAYAでビデオを借りてきたのだが、もともと日本語吹替版しか店にはなく、実際にはどういう台詞だったのか分からないままでいる。もっとも、字幕スーパー版があったとしても、小学校低学年時代の私の英語力では到底判読できなかったことだろう。

 多少、気にはなっているのだが、いまさらそのためだけに再鑑賞してみたいほどの映画でもなく、詳しい人がいるのなら訊いてみたいのだが、そんな幅広い交友関係も持っていない。たぶん、分からないまま一生を終えるのだろう(今、ちょっと調べてみたら、ポール・アンカも出演していたことがわかり、少しだけ再鑑賞への欲は高まった)。

 DVDやブルーレイであれば、メニュー画面で字幕も吹替も選び放題だが、VHS時代はそういうわけにもいかなかった。私が利用していた店舗では、コメディ映画は吹替版しか置いていないものが多く、『キャプテン・ロン』と同じような謎を残したままの作品がいくつかある。また、これらの多くが作品としては再鑑賞してみたいほどのものでもなく、そういう作品に限っていまだにDVD/ブルーレイ化されていなかったりもするので、やはり火葬されるまで謎のままの可能性が高い。

 そう考えると、とても惜しい気もしてくるが、それだけのために人生の貴重な残り時間を割くのもまた惜しい。なにかの巡りあわせで、たまたま謎だけ解けたらいいな、などと思っている。

キャプテン・ロン [Laser Disc]

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  • 発売日: 1993/12/21
  • メディア: Laser Disc
 

 

「おいしい卵焼きを作るのが夢だった。」

 昔ほど観たいテレビ番組がなくなってしまった今もなお、野球中継の延長に対して過剰なまでの憎悪を抱いてしまうのは、散々泣かされてきた経験があるからだ。

 幸いにも今年の日本シリーズは巨人の4連敗により最短の日程で終了したが、それでも私の(昔に比べれば「数少ない」と言っても良い)お気に入り番組が数本延長の影響を受けた。録画機能や見逃し配信などの救済措置が充実していなかった時期であれば、全野球関係者および野球愛好者に呪いをかけていたことだろう。あの日のように(何度か経験あり)。

 さて、これは私が欠かさず視聴している番組というわけではないのだが、11月21日放送の『嵐にしやがれ』が中継延長の影響を受けており、そのことについてツイッター等に様々な声があがった。そのなかに、10月24日に行われた「嵐フェス2020」の収録で使用された花火の煙や風船が神宮球場に流れ込みヤクルト対中日戦の試合が中断してしまった騒動に触れ、「あの時、怒らずにいてくれた野球ファンがたくさんいたのだから、嵐ファンも暖かく見守りましょう」という旨のものがあったのだが、どれだけの数の野球ファンが騒動を大目に見てくれたのかは知らないし、嵐のファンがそういった気持ちで“暖かく見守る”こと自体は悪いことではないのだけれども、むしろ過去に数えきれないほど多くの他番組とそのファンに迷惑をかけてきた野球側がこの騒動に激怒していたのなら、それこそお門違いなのではないかと私は思ってしまった。

 野球延長を快く思わないのは、別に11月21日の『嵐にしやがれ』を待っていたファンだけではない。他の番組を待っている人も大勢いたことであろうし、野球嫌いの多くは過去の野球中継の横暴さに対しての恨みが蓄積しているのだから、嵐フェス2020での騒動だけを引き合いに出されても納得などできないのである。なんなら、この件で嵐側にもっと非難が集中していたのなら、たとえアンチ嵐であっても「この時ばかりは!」と嵐側についた可能性もある(私自身は、諸事情により一部の「嵐ファン」に対して嫌悪感を抱いてはいるものの、嵐自体に怨みはなく、出演作品や関連作品を素直に楽しんだこともたくさんある)。

 さて、そんな野球中継も私の度重なる呪いの効果か、今ではテレビ中継されることも少なくなった。昭和どころか平成さえ終焉した令和の時代、「巨人・大鵬・卵焼き」は歴史資料でしかなかくなっているのだろう。結局、一番息が長かったのは玉子焼きである。

 ところで、野球中継が盛んだった時代、雨天による試合中止の場合の穴埋め、いわゆる「雨傘番組」としてグルメ特番が予定されているのを新聞等のテレビ欄でよく見かけた。しかし、卵焼きの人気が最も息が長いという点から考えれば、題材としては野球よりもグルメのほうが数字を稼げるたのではないかという気もする。もちろん、テレビ番組として見たいかどうかは別の話であるし、穴埋めのための番組なのだから、きっと演出も編集も雑だったりするのだろう。日本の野球が嫌いな私でも、試合が中止になったからといって、穴埋めのグルメ番組をわざわざ観たりはしない。

野球選手が夢だった

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  • アーティスト:KAN
  • 発売日: 2010/10/27
  • メディア: CD
 

 

『薬』(2020年11月16日の夢をもとに)

 薬は老女の腕を煮しめたもので、三軒の木造家屋程の価値がある。腕は祈ればすぐに生えてくるが、その度にオオエドアブラマキトカゲが一匹失われる。この仕組みを知っているのは長老くらいのものだが、それが知れ渡ったところで土地の者は誰ひとり心を痛めたりしない。生えたての腕が誇らしげに語るには、薬として腕を提供する老女が痛みを感じないことを誰もが知ったいま、その先を考える者などいないらしい。祈りも形だけのものであるし、暮らしに支障をきたすものではない。たしかに薬を必要とする者は滅多に現れないが、いくらその先を考える者がいないといっても、薬が必要になる未来を想像したことがない者はおらず、薬が常に長老の家に保管されていなければ、日々の暮らしによって先を考える余裕を失うことすら叶わなくなるだろう。

文庫 ふたりの老女 (草思社文庫)

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『天水』(2020年11月13日の夢をもとに)

 シローさんのお部屋が台所まで天水(あまみず)に満たされてしまったので食事を届けに行く。まだ天水が訪れてこない私の部屋へ避難してもらったほうが良いのだけれど、私はシローさんのお部屋が好きなので、わがままを言ってぎりぎりまで過ごさせてもらうことにしている。もちろん、居間まで満たされてしまったらどうしようもないので、大事なものはすでに私の部屋に移してある。執着心の少ないあなたにしては珍しいねと友だちに言われもしたけれど、もう何も心配はいらない。私の飽き性がまた顔をのぞかせるより先に私のお部屋も天水で満たされてしまうでしょう。

水のこと: 水の国、わかやま。

水のこと: 水の国、わかやま。

 

 

街は消え、船が現れ、飛び降りた

 友達のいない人間にとって修学旅行というのは、常に遭難する危険と隣り合わせである。見知らぬ土地を見知っていると勝手に判断された名前もあやふやな同世代の人間たちと共に行動させられるのだから、少しでも気を抜けばひとりぼっちにされてしまう。学校での孤独に耐えることができる人間でも、見知らぬ土地での孤独だと急におろおろしてしまったりする。

 概して友達のいない人間というのは、他人に話しかけることが苦手であるから、その土地の人間に道を訊くのも困難であるし、また極端なマイナス思考の持ち主であることも多く、たまたま道を訊いた人間がとんでもない極悪人だったらなどと考えてしまって八方塞がりに陥る危険性もある。まったく気の休まることがない。

 だからなのだろうか、私は30代半ばという現在もなお、頻繁に見知らぬ街を冷や汗かきながら彷徨う夢を見る。30半ばの現在の自分が彷徨っているのなら、そこまで冷や汗をかくこともないのだが、夢の中の自分はたいてい金銭的余裕のない(今だってないが)貧弱な(貧弱さに拍車がかかっているという説もあるが)少年で、「修学旅行は楽しいイベント」だと信じて疑わぬ者たちに対する呪詛を抱きながら、明らかな危険人物の目で徘徊している。ヤケになってしまうこと(あくまで夢の中でだが)もしばしばで、先日も『飢餓海峡』のような結末を迎えたところで目が覚め、いまだ肉体にも精神にもダメージが残っている。2021年の初夢でなかったことだけが幸いである。

飢餓海峡 [DVD]

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  • 発売日: 2013/11/01
  • メディア: DVD
 
飢餓海峡 上下巻セット (新潮文庫)

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  • 発売日: 1990/03/25
  • メディア:
 

 

きみこの「み」はどこにある

 常盤貴子を「じょうばんきみこ」と読んだ知人がいる。小学生の頃の話である。人名、特に芸名や筆名であれば「貴子」だけで「きみこ」と読ませる場合も存在するのかもしれないが、知人がそういった例を知っていたわけではなかった。では、知人は「常盤貴子」のどこに「み」を見たのだろう。

 「常盤さん、綺麗だから“美”って文字が自然と見えたんじゃないの?」と勘繰る人もいるかもしれない。常盤貴子が綺麗であるという点に反論はないし、たとえ反論があったとしても、それは個人的な好みの問題でしかない。しかし、「常盤」を「じょうばん」としか読めなかった知人が、はたして書かれてもいない「美」の文字を連想できただろうか。そもそも「美」は「ビ」の印象が強く、「み」の印象は弱いように思える。「み」は「美」だけでなく、「三」や「実」でも良いのである。いずれにしても、私には当時の知人が常盤貴子に美を感じていたとしても、あるはずのない漢字の「美」を空目するとは思えない。

 この知人は、中学入学の時点でそれまでの自身の恥ずかしい経験は、「じょうばんきみこ」の件も含めて綺麗さっぱり忘れているようだった。いや、忘れたことにしているだけだったのかもしれないが、どちらにせよ「み」の出どころを知ることはできなかった。中学の時点でそうなのだから、2020年現在、偶然に再会したとしても、「み」の謎を解くことはできないだろう。疎遠になっていた知人との久しぶりの再会に、わざわざ相手の過去の恥を晒すような無神経野郎になりたいわけでもない。

 結局、「きみこ」の「み」は幸子の「幸」より見つけるのは困難に思われるが、見つける必要性もないので、幸子の「幸」を優先的に探してやるべきであろう。

愛していると言ってくれ BOXセット [DVD]

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  • 発売日: 2000/10/18
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乙女の儚夢 (Bellwood LP Collection) [Analog]

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  • アーティスト:あがた森魚
  • 発売日: 2014/12/10
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