2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『この西瓜ころがし野郎』(19)

元々用意してあった西瓜や飛び跳ねまわるうちに運悪くこの土地へ舞い戻って来てしまった西瓜も含め、サトリの妻と少女は西瓜たちの事情などおかまいなしに蹴り飛ばし続けており、その姿はなにか美しい舞のようで、思わず詩人が「舞い戻りの舞」と呟いたのに…

『この西瓜ころがし野郎』(18)

西瓜の血汁にまみれて転がりながらも悪態を喚き続ける西瓜ころがしの姿を最初に目にした余所の土地の者は、西瓜知りたがりのスプーキーの四散した身体から7度目の復活を遂げた小鬼のような化け物を背負ったグランゼニアという国の詩人で、詩人にありがちな放…

『この西瓜ころがし野郎』(17)

西瓜の尻尾のごとく激しく振り回され続けた西瓜知りたがりのスプーキーの身体は、西瓜が西瓜知りたがりのスプーキーの家から西瓜ころがしが転げ落ちているこの土地まで飛んでくるまで至る所でちぎれ飛び、ちぎれ飛んだ身体の一部もまたちぎれ四散し、西瓜に…

『この西瓜ころがし野郎』(16)

各地の西瓜たちの西瓜ころがしへの憎悪の叫びが少しばかりも西瓜ころがし本人の耳に届いていないと知るや、西瓜たちは西瓜たちなりの伝達手段によってあっという間に西瓜ころがしの転げ落ちているこの土地の位置を把握し、それぞれがそれぞれの形でこの土地…

『この西瓜ころがし野郎』(15)

いくら西瓜がへばるほど中身がほじくり出されていたからといって、頭を突っ込んでみれば食えるだけの中身はそれなりに残っており、しかも西瓜知りたがりのスプーキーは皮まで食い破らんとする勢いで中身に齧りついており、この場に西瓜知りたがりのスプーキ…

『この西瓜ころがし野郎』(14)

そんな新鮮町の住人のなかに西瓜の中身について調べたくなった者がおり、それまでは周りから珍しもの好きのスプーキーと呼ばれていたが、西瓜ころがしの野郎のせいで西瓜知りたがりのスプーキーと呼ばれるようになってしまい、幸いにもスプーキーな彼はなん…

『この西瓜ころがし野郎』(13)

ラカンバのお百姓さんが腹いせに蹴とばした小ぶりの西瓜は上空を飛んでいたペリカンの口にがぽっとはまり、あわてたペリカンは羽ばたくのを忘れて顎をがっこがっこと揺さぶりながらお百姓さんの頭の上に落下、ペリカン嫌いのお百姓さんは体中を掻きむしりな…

『この西瓜ころがし野郎』(12)

西瓜ころがしはかたくなに西瓜は我が国だけの作物だと言い張るのだが、それはもちろん西瓜ころがしの無知ゆえに成せる業であり、リプトニアやラカンバの者たちは、皆それぞれの言語で「この西瓜野郎、この西瓜野郎」と跳ね交う西瓜ともみあいへしあいしてい…

『この西瓜ころがし野郎』(11)

全身を西瓜で紅く染めた店主の妻がやみくもに鉈を振り回すものだから、店の中は西瓜以外の赤い色まで混じって大変な騒ぎで、この期に乗じて気に入らぬ者の頭と西瓜を見紛う振りをする者も続出、悲鳴と歓声も混ざり合うなか、基本的には性善説が信じられてい…