2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(7)

卒業式の翌日に祖母の家へ行くと、軽自動車が置かれていた場所が広い窪みになっていた。深さは私の腰の位置程で焼け焦げになった遺体が4体ほど転がっていた。「お前は短足だからな」と冷やかしてきた隣の親父も見分けがつかなくなったので放り込み、祖母に言…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(6)

そんな私も児童の集まる場では何度かパニックに陥った。卒業式の最中に一人だけパニックの発作が起きたときは、椅子に嵌ったまま廊下へ出るも誰も気にとめなかった。いけすかない連中が小馬鹿にしながら「アイスはこっちにあるよ~」などと言って呼び戻そう…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(5)

線路を初めて見たのは3歳の頃で、それはマサ君も同じだった。ただし私が見た線路は廃線になった中磯瀬駅ではなく、ヨッチおじさんの家の先のものだった。エリナー・リグビーの墓の前で両親に「もう死んじゃうの?」と訊きつづけた日のことである。廃線になっ…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(4)

忘れようがなかったのは、自由行動中、ペイルランド全域に戒厳令が敷かれたことだ。撃たれた者もいるなか、町外れの廃墟付近に身を潜めていると役人らしき3人の男に丁寧な対応で連行された。手続中にヤスヒロと久しぶりに再会するも、感極まって大声で話しか…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(3)

立体駐車場から道路のほうを見下ろすと、今となっては懐かしい風情の電話ボックスがある。マサ君が電話を使っていたアメリカ人らしき女性と話しているのが見え、「君のパパはトランプ大統領の車にいる?」などと訊かれていた。マサ君は「アイムファーザー、…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(2)

5年の夏の日、非常階段の踊り場から中学校で出会うことになるヨウジ君が首を吊って垂れ下がっていたので、タッちゃんも含めたクラスのみんなで担いで教室へ運んだ。ヨウジ君はへにゃへにゃに軽くなっていて、ずっと恥ずかしがるような言葉を発していたようだ…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(1)

中磯瀬の町から母の実家までまっすぐに伸びる道は、大部分が動く歩道のような仕組みになっていて、薬をもらって家へ帰る時間帯には学校帰りのやんちゃな子供たちがそのやんちゃぶりを遺憾なく発揮しており、私はいつも母が怪我をしないか不安でしかたなかっ…

2021年の30選/20選

2021年に発表された各ジャンルにおける作品の個人的30選/20選。 【2021年の海外音楽アルバム30選】 Altın Gün『Yol』 Villagers『Fever Dreams』 エムドゥ・モクター『Afrique Victime』 エル・ミシェルズ・アフェアー『Yeti Season』 カエターノ・ヴェロー…

別に何年後だろうと地元に国家行事なんか呼び寄せなくていいから、せめて体も心も最低限の健康を保てるような年になってほしいよ、2022

やはり小賢しいゴマすりでは2021年様に気に入られることなどできなかったようで、珍しく正月三が日は平穏に過ごせたものの、後はまあもうウンザリすることだらけで、そりゃあ良かったこともあったのだろうけれど、なかなか嫌な記憶を打ち消すほどのことはな…