2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(32)

小学生の頃の従兄弟は、将来の夢に「情報屋」と書いて提出し、職員室に呼び出されるような子供だったが、ベースギターを覚えてからは不思議と学校の成績も伸びていった。再び窓の外に目を移すと、アスファルトに点々と人骨らしき白い欠片が張り付いていたが…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(31)

騒がしいテーマパークの前日は沖縄に居て、私は食べ物がどうにも合わず、ドラゴンフルーツだけを食べて飢えと渇きを癒やしていた。ゆえにテーマパークでもひどい空腹状態のはずだったが、周囲に溢れるうるさいほどの明るさは私の食欲をすっかり失わせており…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(30)

すでに小学校は廃校になっていて、かつての青年団の連中は誰も綺麗な靴など履いていない。共闘隊たちもわざわざ狙い撃ちする必要を感じていないようで、呆けた顔が品揃えの悪い下磯瀬の小さなスーパーの前に棒立ちしているだけだった。数少ない子供たちは新…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(29)

公民館の裏には川が流れていて、それは小学校にも続いていた。流れ出た黄色い液体が土地に染み込み、グラウンドも腐らせてくれれば、青年団をはじめとするスポーツファシストたちの身体も期限切れのまま長いこと放置されたチョコレートのようにぼろぼろと崩…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(28)

公民館の駐車場まで来るとエイの気配もなくなり、鍵がかかっていないことも知っていた私は堂々と入口から中へ入った。祖母が民謡の練習に使っていた大広間の壁には気になる隙間があり、ちょうど良いと思ったので、たまたま持参していたシャンプーを流し込む…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(27)

飲み屋通りは湿度も高く、近づくのも不快だったが、その先に崩れかけた木造の中古ビデオ屋があるので我慢して頻繁に足を運んだ。どう調べても素性がつかめない怪し気な販売元のビデオばかりの並んでいる店で、初めて行った際には『奇習!悪習!猟奇奇人地帯…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(26)

モガリはニエトの孫で、我が家とは少なからず因縁があった。父や伯母が子供の頃、飼っていた猫が行方不明になり、祖父が探すとニエトの家で吊るされているのを発見した。温厚な祖父が他人を殴るのを初めて見たと父は言った。幸い父の猫は無事だったが、喰わ…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(25)

その翌日、無理矢理参加させられた合コンで、お嬢は「好きなタイプは身体に良さそうな人。でも恋愛沙汰は身体に悪そう」とだけ答え、皺だらけの五千円札を置いてすぐに店を出たという。後に「恥じらいの四戦士」と呼ばれた関東での私の友人たちにこの話をす…