以前記した某映画監督氏(いや、別に隠す必要もない。天願大介氏だ)の「有名な監督は例外なく大食いである」的な発言について、友人に「私がこの監督を知らないのは、この監督が小食だから?」と聞かれた。
この友人は、それなりに映画を観る人だが、決して映画がなければ生きていけないような人間ではない。そんなものがなくとも、彼女はたくましく生きている。そもそも、映画がなければ生きていけないような人間など、そうそういないのである(フィクションがなければ生きていけない人間は、けっこういると思うのだが、「映画」に限定されるものではないだろう)。 だから、そんなものがなくても生きていける大多数のたくましい方々は、映画監督の名前など知らんのである。知る必要もないのである。「有名さ」の度合でいえば、明石家さんまさんとかタモリさんなどとは比較にならない。
そのうえで「有名な監督」といえる存在など、ひょっとしたら10人にも満たないかもしれない。これでは、統計もなにもあったものではない。
ちなみに、映画以外の芸術家/文化人の食生活を覗いてみると「例外なく大食」というようなことは全く言えない。グルメかどうかという話になれば、むしろ悪食の方が多いのでは、とさえ思う。 ビートルズの四人はコーンフレークで満足していたらしいし(ジョン・レノンのドキュメント映画『イマジン』での食事シーンも、トーストかなにかを牛乳に浸しているだけだった)、泉鏡花はどんなものでも徹底的に煮込まないと食わなかったという。 池波正太郎は美食家で大食家のようだが、私は食について書いたり語ったりしている時の池波正太郎が好きではないので、正直どうでもいい。
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(mixiでのコメントの転載)
Commented by ホンコン
僕はこの発言をした監督の事も知らないし、映画も信頼できる人のお薦め映画(とまとまくん)ぐらいしか見ない無教養野郎なので詳しいことは全く判りませんが、この発言をした監督は大食いに別の意味を持たせたのではないですかね?
ビートルズは初期の頃に黒人のR&Bを咀嚼して、後期では色々な音楽を上手に消化して自分のものにしていた、だから大食いみたいな…
でもこれだとボノやマイケルスタンプみたいな突然変異種(音楽をあまり聴いていなかった人達)はどうなるのかと言いたくなりますが…
2009年11月22日 22:19
Commented by 美月雨竜
ホンコンさん
監督氏の論調からすると、たしかに「別の意味」も含めてはいるようなのですが、結論は「良いものを求めるから食に関しても大食いなんだ」というものになっていました。曰く、大食は助平に換えても良いらしいのですが…。
邪推すると「小食で下ネタなんて言えません的なやつに面白いものは作れないぜ」と言いたいように思えてしまうような文面でした。あくまで邪推ですが。
いずれにしても、「例外への想像力」が欠けた発言のように思えたのです。
2009年11月22日 22:28
Commented by ホンコン
なるほど、シャイな監督でそういった含ませた表現を好む人を想像していましたから少し残念です。
2009年11月23日 17:25