色んな「裸の〜」を持った男、逝く

 レスリー・ニールセンが亡くなった(11月28日。享年84歳)。

 アメリカのコメディ映画を片っ端から観ていた幼稚園〜小学校低学年時の私にとって、レスリー・ニールセン(なんか、当時の仲間内では、親しみを込めて「レスリー・ニールセンのおじさん」と呼んでいた)は、スターでありヒーローでもあった。個人的には、エディ・マーフィビリー・クリスタルスティーブ・マーチンには今ひとつ嵌まれず、ダン・エイクロイドブルース・ブラザーズでのカッコよさの方が強く、トム・ハンクスロビン・ウィリアムズは既に名優然としてしまっていたし、『ホット★ショット』のチャーリー・シーンや『ポリスアカデミー』のスティーヴ・グッテンバーグは別にコメディ専門というわけではないので、やっぱりアメリカン・コメディ・スターはニールセンおじさんなのだ(ポーリー・ショアも好きなんだが、いかんせん作品が少ない。ローワン・アトキンソンはイギリスなので、別枠。ちなみに、マイク・マイヤーズはずいぶん後になってから知った)。まあ、最初は二枚目俳優だったのだけど(『ポセイドン・アドベンチャー』では、渋い船長の姿を見ることができる。コメディスターになってからも、端正なおじさま顔でボケたりするのがウケたので、基本的には二枚目なわけです)。

 ニールセンと言えば『フライング・コップ』、そして、その映画版の『裸の銃を持つ男』3部作のフランク・ドレビン警部補。バットマンよりスーパーマンよりウルトラマンより、ニールセンおじさん演じるフランク・ドレビン警部補が「僕のヒーロー」だった。

 日本では、『裸の銃を持つ男』のインパクトが強すぎて、ニールセンおじさんの出演作のほとんどが「裸の〜」というものだった(スティーヴン・セガールの主演作を日本で勝手に「沈黙」シリーズにしたのと同じ)。本家以外には、『裸の宇宙銃を持つ男』『裸の十字架を持つ男』『裸のローマ帝国』『裸の銃を持つ逃亡者』『裸の医師を持つ男』があり、「裸の〜」がつかなくても『鉄の顔を持つ男』というのもある(全部観ました)。

 『裸の銃を持つ男』3部作は、淀川長治さんが存命の頃の「日曜洋画劇場」でよく放送されていた。だから、実家でテレビ録画した『裸〜』のビデオには、淀川さんの解説がついている。

 この頃は、『裸〜』的なコメディ映画がよくテレビでも放送されていた。だが、奇跡の生還だけではない決定的瞬間やゾンビ映画、クローネンバーグ的ホラーが放送されなくなったように、こういったコメディ映画も最近は放送されなくなってしまった(そもそも、制作すらあまりされていないのだが)。下ネタ規制なのか知らんが、非常に寂しい。もう、「いじめはお笑い番組の影響」とか根拠もないのにほざいてるおっさんとかババアとかは、ドレビン警部補に偽カダフィや偽アミンのようにボコボコにされたうえで、クローネンバーグ先生特性の転送ポッドで表皮と内臓を裏返されて悶死すればいいのにと思う。息絶えた後のお肉は、ロメロゾンビとフルチゾンビとバタリアンのエサにしよう。

 ニールセンおじさんの死因は、ニュースによると肺炎とそれに伴う合併症で、友人や妻に看取られながら亡くなったらしい。チャップリンの最期もそんな感じだったらしいし、喜劇王/コメディスターの人生の締めくくりは、やっぱり幸せなものである方が、ファンとしても嬉しい。

 アメリカンコメディ万歳!
 もういちど、この痛快さをみんなで笑える世の中に。

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