信頼というのは、時に恐ろしい怪物を産むのかもしれませんねぇ

 読み直してみたけど、やっぱり腹立たしいだけだった井上ひさしの『ナイン』だが、これを基にしたエピソードを『相棒』でやってみてほしいと思った。

 おそらく杉下右京が冷たく切り捨てるのは、寸借詐欺をして捕まる元キャプテンではなく、彼を野放しにした他のナインの面々だろう。「あなた方の底の浅い仲間意識が招いた結果ですよ」とかね。本当にキャプテンの人間性を信じている(信じたい)なら、仲間達は率先して彼に罪を償わせるべきだろう。

 もっとも、井上ひさしの真意ってのは分からないから、ひょっとしたらそういう風に読み取ってもらおうとしていたのかもしれないけれど、あの終わり方じゃ「少年野球団の絆は永遠なのだなあ」とかいう底の浅い感動を与えてるだけだと思う。

 『ナイン』のキャプテンの甘やかされ方は、そのうち勢い余って詐欺被害者を殺しちゃうレベルだとも思うので、いっそ、そういうホラーな話にしてしまえばいいと思ったりもする。