目つぶし星人の謎

 「目つぶし星人 カタン」とは『ウルトラマンタロウ』第35話「必殺!タロウ怒りの一撃!」に登場した宇宙人である。ウルトラシリーズのファンには、タロウ一世一代の無茶な技・ウルトラダイナマイト(自らを爆弾にして敵に突っ込み、自爆。自分は後に蘇生。寿命が相当な勢いで縮むくらいの荒技らしい)を喰らった唯一の敵として知られている。造型的には、蚊のような姿をした宇宙人である。ひょっとしたら、映画監督の安藤尋くるり岸田繁は、幼い頃「カタンに似てる」と言われた経験があるかもしれない。

 まあ、そんなことは置いておいて、問題はこの宇宙人の名前である。『空想科学読本』の柳田理科雄も引っかかっていたようだけど、「目つぶし星人」という肩書きは、ウルトラダイナマイトのような大技を使う相手としては、あまりに情けない名前ではないか? 「タロウ」は、ウルトラシリーズの中でも、とりわけツッコミどころの多い作品(ネタっぽい要素が多い)ではあるけれど、それにしたって……といったところだ。

 ただ、もうひとつ気になるのは、「目つぶし星人」というのは、つまり「目つぶし星の人/目つぶし星から来た人」を意味しているはずだから、当然カタンの出身地は「目つぶし星」になるはずなのに、調べてみるとカタンの出身地は「カタン星」であった。なら、何故わざわざ「目つぶし星人」などと名乗るのか。

 同じ謎は、続く第36話「ひきょうもの!花嫁は泣いた」(タイトルの時点でふざけているとしか思えない)に登場する「ねこ舌星人 グロスト」にも言えて、こいつも「ねこ舌星」の出身ではなく、「グロスト星」の出身であった。

 第37話「怪獣よ 故郷へ帰れ」に登場する「醜悪星人 メドゥーサ星人」にいたっては、肩書きが重複している。「危険が危ない」みたいな心地悪さ(だが、第44話「あっ!タロウが食べられる!」に登場した「きさらぎ星人 オニバンバ」は、ちゃんと「きさらぎ星」の出身者だった。何故、こんなややこしいことになっているのだろう。……にしても、なんだこのタイトル。)。

 彼らの肩書きの情けなさには目をつむるとしても、どうしてもそれを名乗りたいなら「目つぶし宇宙人」「ねこ舌宇宙人」としておけば良いはずである。実際、ウルトラシリーズに登場した多くの「〜星人」の肩書きは「〜宇宙人」である(「タロウ」においても、第38話「ウルトラのクリスマスツリー」に登場したミラクル星人の肩書きは「エフェクト宇宙人」だった。ただし、同話に登場する「緑色宇宙人 テロリスト星人」の出身地は「テロ星」。どうも「タロウ」の設定はいい加減な気がする)。

 これは、封印作品マニアなら誰もが知る『ウルトラセブン』第12話「遊星より愛をこめて」に登場したスペル星人の問題にも繋がる。スペル星人の一般的な肩書きは「吸血宇宙人」なのだが、雑誌「小学二年生」1970年11月号の付録「かいじゅうけっせんカード」での肩書きが「ひばく(被爆)せい人」だった。これによって「被爆者を怪獣扱いしている」といった抗議が殺到し、第12話は欠番となってしまうのだけど、設定通りの「被爆してしまった宇宙人」という意味での「被爆宇宙人」なら、ここまで大きな問題にはならなかったんじゃないかとも思う。少なくとも、製作側が反論するには、そちらの方が良かったと思う。

 私は『ウルトラマンA』までは全話観ているのだが、どうも「タロウ」にはついていけず、何話かを飛ばし飛ばし観たくらいで、他は幼い頃に父親が買ってくれた「ウルトラマン大図鑑」で仕入れた知識くらいしかない。ゆえに目つぶし星人にしてもねこ舌星人にしても、詳しいことは知らないのだが、彼らのネーミングのいい加減さに何らかの理由があるのかどうかは、昔から少し気になっていた。ただ、必死に調べようと思うほど気になっているかと言えば、そうでもない。私の中での「タロウ」の重要度は、その程度のものなのである。

封印作品の謎

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