「私の映画は20世紀の最後の三分の一における世界についてのものだ」(フレデリック・ワイズマン)

 フレデリック・ワイズマンというドキュメンタリー映画監督については以前も少し書いた。→ http://d.hatena.ne.jp/uryuu1969/20100521/1335785971 (2010.5.21 あらかじめ決められた顧客たちの為のドキュメンタリー)

 たぶんDVDなんか出てないんだろうなあと思っていたのだが、全作品DVDが購入できることを今になって知った。↓のサイトで購入可能らしい。
 http://www.zipporah.com/

 「ワイズマン作品のDVDが買える」というよりは、ワイズマン作品専門の会社であるらしい。しかも、リージョンフリーなので、日本の機器でも問題なく鑑賞可能のようだ。

 ワイズマンについて書いてるブログとかないかなあとネットを漂っていたら、とあるブログでこのサイトについて書かれていて、それで知ることができた。そのブログの書き手さんも、その日までワイズマン作品がDVD化されていることは知らなかったようだ。おそらく、ワイズマンの作品を一本でも観たことのある人なら、その内容からDVD化は難しいだろうと考えるはずだから、無理もない。

 ドキュメンタリーを志す者にとって、ワイズマンの作品はすべて必見作だと思うのだが、日本映画学校(現・日本映画大学)のジャーナルコースで鑑賞会とかあったのだろうか。土本典昭とかなら観てそうだが、ワイズマンはどうだろう。

 ちなみに、これも以前触れた話題だが、有名な数学ジョーク「黒い羊のはなし」に即して言えば、ワイズマンは決して「詩人」ではない。


 「黒い羊のお話」

 ある国を数学者と物理学者と詩人が一緒に電車で旅行していた。
 すると、窓から牧場が見え、そこには1匹の黒い毛の羊がいた。
 詩人:この国の羊の毛は黒いんですね。
 物理学者:いえ、この国には黒い毛の羊が少なくとも1匹いるということしかわかりません。
 数学者:いえ、この国には身体の少なくとも片側の毛が黒い羊が少なくとも1匹いるということしかわかりません。


 芸術家肌の人間が社会問題を扱うと、往々にして「詩人的」な失敗を犯しがちだ(東日本大震災以降の幾人かの芸術家は、残念ながら詩人的失敗の具体例となっている)。だが、ワイズマンの作品は、常に「数学者的」な思考で構成されている。

 たとえば、以前も触れた代表作にして最大の問題作『チチカット・フォーリーズ』は、精神病院刑務所のドキュメンタリーなのだが、フィルモグラフィの説明にある通り「マサチューセツ州ブリッジウォーター精神病院刑務所の日常」以上のことを語ろうとはしていない。たしかに、映し出されるブリッジウォーター精神病院刑務所の日常の中には、目を背けたくなるようなシーンも多い。しかし、ワイズマンは受刑者側にも看守側にもけっして寄り添わない。そして、寄り添わないからこそ、この刑務所の抱える問題点が明確に呈示される。責任追及の映画ではない。これこそ「考えさせる映画」と言えよう。

 「考えさせる映画」とか言って、実際は作り手が感じたことを正当化するために都合のいい映像を寄せ集めただけのものも多く、そういうのは悪質なプロパガンダ映画でしかない。自覚的なプロパガンダ映画と違って、正義感に裏打ちされた無自覚のプロパガンダであるから、余計にタチが悪い。

 だからこそ、ワイズマンが自分の映画は「ルポルタージュ的であるよりは、小説的でありフィクション的だ」と語ることの意味を「社会派」的な活動の多い表現者映画作家だけでなくライターや音楽家も含め)は重く受け止めるべきだ(ルポルタージュが本業と思しき人物のデマゴーグぶりを見ると、ワイズマンの言葉は更に重く響く)。

フレデリック・ワイズマン

フレデリック・ワイズマン

 

 公開中の映画『隣る人』(とある児童養護施設での、親と暮らせない子供たちと保育士、再び親と暮らすことを願う親、その関わりを8年間に渡って撮りつづけたドキュメンタリー。監督:刀川和也 http://tonaru-hito.com/ )のツイッター公式アカウントがどういうわけか私をフォローしてくれている。おそらく北海道では札幌くらいでしか上映しないのだろうけど、ワイズマン的な視点で作られてるのなら観てみたいところ。

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 呟き散らかしたまとめ。


 オードリーⅡ飼いたいなあ……。特に1986年版のユカイなあいつ……。(@『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』)

 ……でも、オードリーⅡ(@リトル・ショップ・オブ・ホラーズ)のファンとしては、あんな奴やこんな奴の血肉を喰わせるのもなあ。どうなんだろう、バカの血肉は不味いとかあるのかなあ。

 『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』の効能のひとつに、これを観とけば大半の歯医者は怖くなくなるというのがある。『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』的に言えば「どんなに歯医者が怖くてもスティーヴ・マーティンの歯医者よりはマシ」ってこと。

 ……でも、たしか西原理恵子さんも言ってたけど『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』的な考え方って、健気に生きることはできても、そいつの精神的成長には結びつかないよなあ。現状より下のものばかり見てたら反省もしないだろうし

リトルショップ・オブ・ホラーズ 特別版 [DVD]

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 そりゃ、節電は心がけますよ、当然。でもねえ、関東の某知り合いさん。「北海道はそんなに電気使わねえだろ」って発言はバカな発言だよ。農業=地球に優しいスローライフな職業、だとでも思ってる? いや、別にそうしてもいいよ。でも、そしたら、たぶんおめーに喰わす野菜作ってる余裕ねえから。

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 やけに熊蜂が飛んでいる。どうやら、庭のグスベリーの木に引き寄せられてる模様。蜂は怖いが嫌いじゃないから、殺したくない。スズメバチだとさすがに命の危険があるから巣は除去するだろうけど、あんまりやりたくない。Gとカマドウマと蜘蛛には容赦なく対応するんだがな……。
 だいたい、どうしてうちの庭にグスベリーなんかあるのだろう。実摘んだことなんかないぞ。