夢の成らない撮影実習

 呟き散らかしたことと、呟き散らかそうと思ったことのまとめ


 映画学校で一番つらかったのは、怒られることでも、自分の才能のなさ、努力の足りなさを実感することでもなく、まったく世の中の役に立たないであろう撮影によって、近隣の一般の方々に迷惑がかかってることを実感した時だ。いや、本当、あんなに迷惑のかかる芸術って他にないんじゃないか。以前も言ったけど、黒澤明の「あの家の二階が邪魔だから壊せ」ってエピソードも、巨匠の武勇伝的に語っちゃいかんだろうと思う。

 撮影実習で人止めとかしてた時、いつも「ああ、もしここで止められたせいでこの人たちが遅刻とかしたらどう責任とりゃいいんだよ」とか考えてた。このくだらねえ映画のために、怒られなくてもよかったはずの会社員・大学生などが怒られたり、クビにでもなったりしたらどうするんだ、と。私ならたとえ黒澤明に頼まれたって、自分の家の二階は壊さん。元通りにするって言われても、思い出までは戻せないだろ、と。

 こんな大迷惑な事ばかりやってる奴等が、本気で死ぬほど勉強して、それでなお酷い教授とかに酷い目に遭わされてる大学生/大学院生と対等に話すには、芸術だけでなく科学も医学もあらゆる物事をかたっぱしから本気で勉強するしかないんじゃないかと思ってた。なのに、あらゆる物事どころか映画についてさえ殆ど考えず、自分のオモイデとかオナヤミばかり書き散らかしてた連中はいったいなんだったのだろうと、今もよく思う。


 ツイッターでこのように呟いたら、現役の映画大学の学生から反応があった。以下のような感じ。↓

 なるほど。だが、もし、「くだらない映画」と自負するならば、あなたはその映画となぜ関わる?映画を撮る人間はみな真剣なはずだ。前に「「黄金を抱いて翔べ」の撮影中、韓流スターの存在に気づき野次馬殺到」という事件があり、妻夫木聡が役作りのために休止していたツイッターを使い、非難したんだ。これを「野次馬ばかり集めて申し訳ない」と捉えるのか?映画側はふざけんなと感じてるはずだ。そりゃ映画撮るのは自由じゃないというのは「桐島、部活やめるってよ」でも言及されてる。だが、お互いの協力があるはず。映画側は謝ったかどうかわからないが、そういった点で映画愛が試されるんだとは思うが。(何言ってるかわからなくなってきた)


 私は呟いた後にしばらくツイッターを開いていなかったので、すぐには気づかなかったのだが、私が反応するより先に、別の映画大学生らしき人たちが、この学生に対して色々意見を述べていて、ちょっとした騒動みたいになっていた。だいたい、以下のような感じ。↓

 俺はこの人が言ってる事すごく納得したけどなあ。黒澤の逸話はさておき、撮影なら何やってもいいと勘違いしてるバカ学生も中にはいるだろうし。映画撮るんなら絶対開き直っちゃダメだと思う。

 (上記意見に対する、発端の学生の反応)→要するに: 野次馬ウザい って事なんです。 っていうか、くだらないと思ってる映画の撮影をしてるのが気に食わないと思ったんです。そっからわけわかんない方向に。


 で、私も、なんだかえらいことになっとるなあ、と思って、遅ればせながらメッセージを送った。↓

 とりあえず、あなたから私に向けられた質問というか疑問に先にお答えします。「その映画になぜ関わる?」という問いには、学生時代の撮影は、いわば授業であり、そこから逃げ出す勇気もその場で意見を言う勇気も当時の私にはなかったというのが第一です。今は基本的に自主、商業に関わらず、映画製作にはほぼ関わっていません。次に「映画を撮る人間はみな真剣なはず」という話ですが、私は「真剣にやっていれば、何をしてもいい」という考えには断固反対します。たとえば誤った知識による反原発運動などが逆効果になっている場合、「真剣にやってるという理由で、その行為を許してはいけないと思うわけです。『黄金を抱いて翔べ』に関わる部分は、ちょっと私にはあなたが何を言いたいのかわからない。私の読解力不足かもしれないので、できればもう一度詳しく説明していただけませんか?

 私が件の呟きをした直接のきっかけは、私が映画学校に在籍していた時の多くの学生の取り組み方への反発なのですが、根底にある考えは木瀬さんがおっしゃっているようなこととほぼ同じです。映画撮影もたらす負の側面の極端な例はデニス・ホッパー監督作『ラストムービー』に描かれていたようなものだと思うわけです。ご覧になった事はありますでしょうか? 『桐島〜』は原作はかなり前に読みましたが映画は未見です。原作では、主人公が直接撮影に邪魔な人に失礼な事を言う箇所は、私の記憶にはないのですが、映画版ではそんなシーンがモリカワさんの心に強く残るほどの形で描かれていたのですか?


 このメッセージに対し、その学生は、議論に巻き込んでしまったことの謝罪をしてくれた後、以下のようなメッセージを送ってきた。↓

 「映画の関わり方」⇨なるほど、授業でしたら納得致しました。自主製作で撮られてるのかと、手前が勘違いしていました。
 「映画を撮る人間はみな真剣」⇨僕の書き方が稚拙だったのかもしれませんが、何してもいいとは言ってませんよ。少し、くだらない映画という部分に反応してしまっただけです。くだらないと思う映画はないと思ったからです。
 「黄金を抱いて翔べ」⇨完全なるチョイスミスです。本当何言ってるか自分でも分かりません。ここは無視して下さい。
 「桐島」⇨「ラストムービー」は未見です。今度鑑賞します。「桐島〜」では、議論にも言及しましたが「先生に反対されても撮りたい映画」を撮る時、人が邪魔だからと最初は丁寧に交渉するのですが、だんだんヒートアップして「そこでやる必要ないだろ」とか言い出す始末で、「場所へのこだわりのために、無我夢中で交渉する姿」に非常に印象に残っていました。本来そういう行為はかなり失礼な行為ですが、場所への執着心や映画への熱意等を考えると、なるほどそういうのも大事だな、と考えるに相成ったわけです。


 ちょっと腑に落ちない点がいくつかあったのだが、ここで「この話はこれでやめましょう」と議論を閉じられてしまった。
 だが、これだけは言っておきたかったので、以下のメッセージは送った。↓

 議論は締め切っているようだから、無理に返信しなくても良いですが、これだけは言わせてね。「そこでやる必要がない」のは映画の撮影だって同じこと。「そこじゃなきゃダメ」と思ってるのは撮影する側と映画が好きな人だけ。情熱が大事という所だけで思考停止してないで、映画なんかなくても生きていける大多数の人間をどう説得するかをもっと考えた方が良いと思う。映画を愛しているなら、そういういざこざで「映画嫌い」を増やしちゃいけないとも思うんです。


 で、最後に一言。

「私は一般の民家の二階を壊して映画を撮った黒澤明よりも、自宅の裏にある洞窟で何本も低予算映画撮ってちゃんと利益をあげたロジャー・コーマンを支持します」

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 「真剣にやってる人を批判しちゃいけない」ってことには断固反対し続けてる。極端な事言えば、ヒトラーは真剣にユダヤ人を迫害してたわけだし(まあ、ものすごく極端な話だから、説得力に欠けるけど)  

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 「酒でも呑んで考える? バカ言っちゃいけない。酒ってのは本気で考えた大人、本気で働いた大人の為のものなんだ。酒に逃げる奴に酒を飲む資格はないんだ」
 北方謙三先生あたりがこんな台詞を言うウィスキーのCMが見たい。野坂先生のソクラテスの唄的な感じでね。

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「『私だけでしょうか?』って、この広い世界、あんた程度の人間が考えることなんて、たくさんの人間が既に考えたことだろうし、本当にあんただけなのだったら、それは単に間違えてるってことよ。いちいち『私だけ?』とか付け足して、逃げ道作ってるんじゃないわよ」

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 今現在いじめられている人に対して「それは時間が解決してくれる」と言うのは、いじめに加担してるようなもんだと思う。

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 都市伝説研究の必読本『消えるヒッチハイカー』中古ならアマゾンでもまだ購入可能っぽいな。よかった。これはしょっちゅう読み返す本だから、相手が信頼できる人であってもあまり貸したくないもんなあ。ましてや、今は海を挟んじゃってるし(ただ友達に本を貸すだけなのに、送料かかるとか……)

 オンラインゲームは殆どやらないけど、押井守の『アヴァロン』的な都市伝説ってどれくらい生まれてるんだろうなあ。
 ゲームと都市伝説で思い出すのは、いとうせいこうさんの『ノーライフキング』。市川準監督で映画化された時の主演は高山良って男の子(今は立派な大人。というか、私より年上ですね)で、『世にも奇妙な物語』でも「悪魔のゲームソフト」というゲーム絡みの話で主演していた。
 先に観たのは「悪魔のゲームソフト」の方だったけど、高山良の演技が異様に怖かった。私は、今でも日本のナンバーワン子役は高山良だと思っている。

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