おおかみこどもはアマラとカマラの話を聞いたか?

 おそらく、その多くが創作だったであろうと現在では考えられている野生児アマラとカマラだが、それを踏まえた上で2人の発見者(ということになっている)であり、保護者でもあるキリスト教伝道師ジョセフ・シングの記した『狼に育てられた子』を再読すると(最初に読んだ時は、小学校の教師から実話だと聞かされていた)、シングの行う「実験」がただの虐待にしか思えなくなってくる(家に入りたいという「人間的」な感情が芽生えているか確かめるために、忘れたふりをして、アマラが外に出た状態のまま扉を閉めたりとか…)。「見物人の前でカマラが自分の言ったようにするように、暴力を振るっていた」なんて証言もあるし。

 そういえば、細田守監督の新作『おおかみこどもの雨と雪』に関する感想ブログの中で、「おおかみこども」は文字通り、見た目通りの「狼子供」や「野生児」ではなく、自閉症等の精神障害を持った子供のメタファーではないかと書いているものがあった。私は、『おおかみこどもの雨と雪』は未見だし、細田監督に話を聞いたわけでもないので、正確なこともわからないし、自分なりの意見すら持てない状態でいるが、確かに私も「おおかみこども」と聞いた時、真っ先にアマラとカマラの話を思い出したし、ウィキペディアにすら「実際は野生児ではなく、自閉症の子供だった」と書かれているくらいだから、細田監督だって、そのくらい知っていたことだろう。鑑賞する時は、その点に気を付けながら、観てみることにしようと思う。

野生児の記録 1 狼に育てられた子

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おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

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 「昔もいじめはあったが、今ほど陰湿ではなかった」と本気で思い込んでいる人間には、いじめをなくすことはできないだろう。
 一時期、私も出入りしていた「日刊ブログ新聞 ぶらっと!」は、今は以前にも増してこういった昭和ノスタルジー的というか江戸礼賛的思想というか(いっそ老害的思想とでも言ってしまおうか)の巣窟になっており、見苦しい事このうえない。見たところで、私の精神が蝕まれるだけだ。