恐るべきことに、美月雨竜氏のもとへ、高校の同窓会の誘いが来た。
実家の住所はまったく変わっていないため、恐るべきことでもなんでもないだろうと思われるかもしれないが、高校の中での美月雨竜氏のびっくりするくらいの社交性のなさを知る者なら、それが恐るべきことであるのを理解してくれるだろう。
ひょっとしたら、何かの陰謀かもしれない。世界征服を狙う闇の組織の指導者となった同期生が、なるべく多くの同窓生たちを招いて、洗脳を施し、組織を大きくしようとしているのかもしれない。その同期生は、きっと忍たま乱太郎のお面をかぶり、自らを「まぶだち」と呼んでいることだろう。
「まぶだち」は、おそらく私以上に高校時代を苦しく過ごした奴なのだろう。「まぶだち」が歩けば、クラスの目立つ男子たちがからかってゲラゲラと笑い、「まぶだち」が近くを通ろうとすると、女子たちは「キモイ」などと囁いたのだろう。
「まぶだち」の組織は、表向きは世界平和を謳った新興宗教団体だ。しかし、その真の目的は、世界への復讐である。彼は、次のオリンピック会場で、おそるべき生物兵器をばらまき、世界中のスポーツを愛する者を絶望のどん底に落とす計画を練っているのだ。頭もよくないくせに、スポーツが少しできるだけで陽の目を浴びているような連中を恐ろしい方法で駆逐してやろうという歪んだ復讐心が彼の腹の底で煮えたぎっているのだろう。似たような境遇の私にはよく分かる。
だからこそ、私は「まぶだち」の仲間にはなるまいと、決意している。
彼の気持ちはよく分かる。しかし、仲間になるのはいけない。
せっかく「まぶだち」が、私が心の奥底で妄想していたことを実行してくれようとしているのだ。
仲間になってしまったら、計画が成功したとしても、その後、追われる身になってしまうではないか。だから、私は、「まぶだち」がその思いを遂げることができるよう、陰で応援しつつ、同窓会当日は、家でのんびり録画した『さまぁ〜ず×さまぁ〜ず』でも観ていることにしよう。
がんばれ「まぶだち」。今も昔も、君と私は、なんら特別な関係などない、ただの同期生だ。
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呟き散らかしたこと
未然に防ぐってのは大事なことなのだけど、未然に防いでいるという状態はつまり何も起きていないわけで、ゆえに評価されにくい。
やってみなけりゃわからない→やってみる→失敗して破滅、という最悪の事態を防ぐために、やってみる前に死ぬほど考えてくれた人たちのおかげで、数えきれない大惨劇の危機を脱してきたはずなのだけど、未然に防いでしまったがゆえに、傍から見れば何も起きていないわけで、結局、やる前に考え続けた人は評価されず、たまたまうまくいってしまった「やってみなけりゃわからない派」の人たちばかりが評価される。
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届いたら、聴かなきゃ。Her Ghost Friend『恋する惑星、果てしない物語』
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