美月氏在住地域近辺に出没する怪異のリスト(第1回)

・ムネヤケ

 一部の人間の胃に寄生している妖怪。好物は肉の脂を含んだ油もの全般。宿主が脂の多い食物を胃にとりこんだ際、体中から毒液を分泌し、宿主の体調を崩す。また、油ものに関する話を聞いただけで喜んでしまって毒液を分泌するものもいる。脂ぎった小太りの少年のような体形だが、顔はマヨネーズを塗りたくられた駱駝のようである。



・低気圧ガール

 湿気が増えると部屋の片隅に居座り始める、顔がやけにでかい女の姿をした妖怪。部屋の湿気を吸収するだけなら良いのだが、吸い込んだ湿気は体中から異臭を放つ別の気体として再度放出されるため、被害はむしろ深刻になる。さらに、居座っている間、ずっと「あたしは汚れていくキャンパス」などと、わけのわからない腐れポエムのようなことを呟き続けるので大変鬱陶しい。アートっぽい映画や小説などが好物だが、作品を正しく理解する知性は持ち合わせていない。天候が回復すれば陽気に耐えられずにいなくなる。また、底抜けに明るいテレビ番組などを流せば、嫌がって消える。



・死神ボギー

 夜中に連絡なしに部屋にあがりこみ、一方的にべらべらしゃべり、飽きると勝手に帰っていく。話は大変面白いが、出くわすたびに寿命を5分ほど吸い取られる。容姿は、『デスノート』に登場するリュークそっくり。爆笑問題太田光も彷彿とさせる。特撮や映画など、好きな話に乗っかると長居してしまう。好物はチョコレート。



・イヌフラシ

 主に小学校の近くに現れ、野良犬を発生させる妖怪。スーツを着た中年男性のような姿をしているが、頭部は犬である。感情によって頭部の犬の種類が変わる(怒っている時はドーベルマン、機嫌の良い時はマルチーズといった具合)。ふかわりょうがかつてネタにしていた「5時間目には犬が現れる」という話は、この妖怪が生みだしたもの。深夜2時に、学校のアスレチックにドッグフードと「骨子求食」と書いた札を置くと、別の小学校へ移動する。



・デンパ=ジャック

 田舎の家のテレビアンテナ近くに巣を張り、電波を妨害する妖怪。普段はオニグモの姿をしているが、正体は『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウ似のイケメン妖怪。面白い番組に限って電波を妨害する。



・イエローゴブリン

 子供が集団で遊んでいる中に、こっそり紛れ込んでいる。意味もなく奇声を発し、子供たちの騒がしさを助長させる。うるささに耐えかねた近隣の人間が叱った時には、すでに異空間に逃げ帰っている。コカコーラをかけると、薄汚れた黄色い肌に黄色い尖った歯を持つ真の姿を晒し、他の子供を食い殺そうとするが、いかんせん体が小さいので、かすり傷が残る程度の肉しか食えない。



・締切五郎

 作家・森見登美彦氏のもとに現れる妖怪・締切次郎の亜種。デビューできていない、作家志望者、脚本家志望者のもとに現れ「君には、守るべき締切なんてそもそも存在しないじゃないか」などと耳元でささやいて、やる気を削ぐ。さよならポニーテールのマンガ『きみのことば』には、「ネムケ」という毛むくじゃらの存在が登場し「才能ないの知ってるの?」などと言っていたが、おそらくあれも締切五郎の仲間だと思われる。声は野口五郎に似ていたと証言する者もいれば、黒板五郎だったという者もいる。稲垣吾郎に似ていたと証言する者はいないが、それはおそらく「吾郎」だからであろう。つまり、山田五郎に似た声の締切五郎と遭遇した者はどこかにいる可能性がある。