カブの海、ホーチミン・シー

 車なら40分程で行ける距離の川で先日、羆が目撃された。まあ、ここ北海道では、そう珍しいことではない。……そう、珍しいことではないし、多くの住民はそれをしっかり理解した上で散歩したりしているのだが、やっぱり出くわしてしまったらどうしようなどと考えると、気晴らしに歩いてみるかという気が起きなくなる。

 映画学校で最後に書いた卒業用シナリオは、私の中学時代が元になっているゆえ、ここ北海道・十勝地方が舞台の中心になっている。執筆のために自宅周辺のみならず、学校や当時のクラスメイトたちの家の近辺も散策したのだが、秘境と呼んで差し支えないような山や林に囲まれた場所がほとんどで、羆との遭遇の恐怖に震えながらのシナリオハンティングであった。車嫌いで、教習所で免許を取得して以降、一度もハンドルを握っていないが、この時だけは「丈夫な鉄の塊に守られながら動きたい」と思った。

 車と言えば、軽自動車の増税に関してのツイッター等で「原付に乗れ」と発言する人がいて、それに対し「日本海側は寒さや雨の多さで原付に乗れない」と反論する人もいたりするようだ。私は諸事情により郵便関係者に知り合いが多いのだが、多くの郵便屋さんは、路面がツルツルの真冬日でも原付で配達して回っていて(勿論、大変なことではあるのだが)、そんな人たちと触れ合って来たせいか、大雨大雪の中での原付移動というものに、あまり抵抗は感じない。ベトナムを走る方が怖い。