あの教室は関東ならGが沸いていた

 西尾維新の「物語シリーズ」のラジオドラマ『佰物語』の中で、主人公の阿良々木君は、「友達がいなかったから一緒に弁当を食べる相手もおらず、かといって一人で食べるのも恥ずかしかったのでいつも早弁していた」と言っているのだが、私は逆に遅弁していた。

 私も一緒に弁当を食べる相手はいなかった。まあ、誘われたことがないわけではないのだが、たとえクラスの中心人物になれていたとしても、あの不衛生で騒がしい教室の中で食事するのは嫌だったし、そもそも何度か書いた通り、私は他人に食事しているところを見られるのが嫌なのだ。よって、学校で弁当を食べたことは一度もない。

 だが、親の作った弁当を捨てることもできない。作ったのが親でなくとも、基本的に食いものを粗末にはできない。そこで、放課後、学校を出て、父の車の駐めてある駐車場まで行き(高校時代、私は父の職場の位置関係から、登下校を父と共にしていた)、車に乗り、そこでようやく遅い昼食を摂っていた。だいたい、午後4時過ぎである。

 無用な心配をかけたくもなかったので、そのことは親に言っていなかったのだが、そうなると問題は、昼食を摂ってから約2時間後には夕食を摂らなくてはいけないことで、もともと食の細い私が、わずか2時間で空腹になることもなく、ほぼ満腹状態の腹に無理矢理つめ込んでいた。

 不思議なのは、そんな生活を3年も続けていたのに、まったく太らなかったことで、これはもう、どんな食生活を送っても私は太ることができないのかもしれない。四六時中、痩せたい痩せたいと呟いている人からしたら憎むべき体質だろうが、痩せたいと言っているくせに、しょっちゅう食い物の話をしているような奴には、この体質のことをわざと聞かせて嫌な思いをさせてやろうと考えたりもする。てめえがただ痩せられないって話で、なぜこちらがいちいち気を使わなきゃならんのかね、という思いもあるわけで。

オリジナルドラマCD 佰物語 (講談社BOX)

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