『世にも奇妙な物語』に関して、あれこれと  その2

 今回は、「世にも奇妙な物語で映像化してほしい原作」について。
 なるべく、まだ「世にも」で作品が映像化されていない作家から選んでみます。
 ネタバレになるので、内容に関しては、ほぼ語りませんが…。


・小説

 多く映像化されている作家は、筒井康隆が8作、渡辺浩弐が同じく8作、次いで星新一清水義範が6作(今回の春の特別編でも清水義範の『復讐病棟』が藤木直人主演で映像化される)。実際、「世にも」向きの作品が多く、今後も(悪く言えば)「困ったら、筒井・渡辺・星・清水で」という感じで、映像化されていくだろう。
 4作映像化されているのが、阿刀田高山田正紀。3作が小松左京中井紀夫、そして東野圭吾だ。もう、このあたりは、作品としての面白さはともかく、映像化されることを知っても驚きはない(『奇妙な出来事』の時代から数えると、高井信も3作映像化されている)。
 いまだ、原作が「世にも」で映像化されていない小説家の作品で、私がかなり前から期待しているのは、片岡義男の『朝になったら、タッチミー』だ。小学3年くらいの頃に、家にあった河出文庫のアンソロジー『札幌ミステリー傑作選』で読んだのだけど、もし「世にも」で映像化されたら、相当記憶に焼き付きそうだと感じた。
 『四畳半神話大系』がフジのノイタミナでアニメ化された森見登美彦も、大好きなので「世にも」での映像化も期待しているのだけど、映像化しずらいものが多く、可能性があるとしたら誰が主役なのかわかりにくいが『四畳半王国見聞録』収録の『大日本凡人會』か、原作表記が太宰治との二重表記になりそうだが『新釈 走れメロス』だろうか。
 五木寛之の短編集『奇妙な味の物語』は、タイトルに奇妙の文字がありながら、映像化されていない。この短編集の収録作品なら、『ホエン・ユー・アー・スマイリング』がとてもブラックで、後味が悪くて、良い感じに「トラウマ系の世にも」になりそうな気がする。
 連作短編集から、一篇を映像化するなら、小路幸也の『リライブ』も良いかもしれないが、ちょっと構成的に映像化しずらいか…。山川方夫の『夏の葬列』も、主演をどう据えるかが難しい。山本弘の『アリスへの決別』も、今だからこそ映像化してほしい気もするが、社会事情的なこと以前に、『夏の葬列』と同じような理由で困難だろう。まあ、なんとか、がんばってもらいたいところだけど。
 前回の『ある日、爆弾がおちてきて』や、今回映像化される『空想少女』など、ラノべ系からも作品が選ばれるようになってきたので、成田良悟の『世界の中心、針山さん』の一篇から『37564人目の悲劇』(2巻収録)と『としれじぇ3〜メン・イン・ブラックの閻魔帳〜』(3巻収録)の「世にも化」をちょっと期待している。『針山さん』は、メドレー的にそれぞれの話が繋がった連作短編だが、単独に切り離しても問題はないだろう(むしろ、はっきり切り離した方が、原作原理主義者からの攻撃も薄まるんじゃないかと…)。同じく、ラノべ系の連作短編だと、清水マリコの『ネペンテス』も「世にも」感に溢れている。大好きな作品なので、もし映像化する場合は、映画などで実績のあった監督にゲスト演出してほしいところだ。
 バカリズムの『未来不動産』が高橋克実主演で映像化されたことを考えると、芸能人の書いた小説が今後また映像化されることもあり得る。可能性が高いのは、『悪いこと』でシナリオを書いたこともあることから、おそらく爆笑問題太田光だろう。初の短編小説集である『マボロシの鳥』に収録されているものよりも、おおひなごうによって漫画化もされた『夢』(『バクマン!』収録)が、まさに「世にも奇妙な物語」。
 芥川龍之介の『仙人』が映像化されているが、古典系なら宮沢賢治の『注文の多い料理店』や太宰治の『トカトントン』あたりも期待したい。
 海外作家の作品も、ごく稀ではあるが、映像化されている。特にジェイムズ・クラベル原作の『23分間の奇跡』が有名だが、小説と呼んでいいのか分からないが、同系統の作品であるフランク・パヴロフの『茶色の朝』も、このご時世、映像化されたらインパクトがあると思う。



・漫画

 神様・手塚治虫の作品も2作「世にも化」されているし、今でも驚きなのは泉昌之の名作『かっこいいスキヤキ』から『夜行』が『夜汽車の男』として、『最後の晩餐』が『理想のスキヤキ』として、『耳堀り』が『耳かき』として映像化されたことだ。この3作を「世にも奇妙な物語」だと捉えたスタッフを私は尊敬する。また、読んだ当初から「絶対、世にもでやる」と思った、うめざわしゅんの『ユートピアズ』からも、既に『どつきどつかれて生きるのさ』と『ヘイトウイルス』が「世にも化」されている。
 未「世にも化」漫画だと、石川雅之の人気作『もやしもん』はアニメもドラマもフジテレビで放送されているのに、「世にも」向き作品目白押しの『週刊石川雅之』は、いまだ「世にも化」されていない。『彼女の告白』や『仮面で踊ろう』なんて、『夜汽車の男』や『理想のスキヤキ』を映像化した「世にも」なら、見事に映像化してくれそうなんだが…。
 『銀魂』の空知英秋の読み切り『13(サーティーン)』(『銀魂』24巻収録)は、是非とも橋本愛主演でやってほしい。事務所が許すかどうかわからないが。
 沙村広明古屋兎丸の短編は、「世にも」的なものが多いのだが、どうにもエロ描写やグロ描写がきついものも多くて、今のテレビ界で映像化するのは困難なのかもしれない(沙村広明の『久誓院家最大のショウ』(『シスタージェネレーター』収録)なんて、大好きなのだが…)。
 内容よりも現在の作者の状況的に難しいと思われるのが岡崎京子だが、『ヘテロセクシャル』収録の『コレクター』は、どうにかして「世にも化」してほしい。真木よう子綾野剛主演でやったら、けっこう洒落にならない感じになるんじゃないかと。
 前回のブログでも書いた通り、高野文子の『田辺のつる』(『絶対安全剃刀』収録)は、芦田愛菜ちゃんがこれ以上大きくならないうちに、なんとか…。演出は安藤尋あたりが良いと思う。
 渡辺ペコの『変身ものがたり』に収録されている『狼少年』は、ジャニーズ枠向きな短篇だろう。
 最後に挙げておきたいのは、大橋卓の『霧の花嫁』。友人の家にあったホラーコミックアンソロジーで読んだきりで、細部の確認ができないのだけど、落合正幸演出作品にありそうな怖さである。



・その他

 『美女缶』、『行列のできる刑事』での映画作品のセルフリメイク。ラジオの特別編で放送された『逆誘拐犯』の映像化である『家族(仮)』など、小説や漫画以外の原作も「世にも」には結構ある。
 バカリズムの小説が原作である『来世不動産』を受けて、今後ありそうなものとして予想しているのは、コントを原作とした「世にも」。さまぁ〜ずバカルディ時代に披露した『200万』(『バカルディライヴ〜サラダで白飯くえねーよ!〜』収録)や『布袋』(『バカルディライヴ〜少年と犬と公園と私〜』収録。このコントは、ラストで大竹一樹がサングラスをつけ、タモリ風に締めるなど、世にものパロディにもなっている)やラーメンズの『小説家らしき存在』や『採集』、あるいはバナナマンの『ルスデン』なんかは、とっても「世にも」的である。
 また、明石家さんま主演の『偶然やろ?』は、原案:杉本高文となっている通り、さんまさんのちょっとした実体験が元になっているらしく、それがアリなら、『人志松本のすべらない話』でほっしゃんが披露した「ダイナマイトの話」なんて、まさしく「世にも奇妙な物語」だと思う。ひょっとしたら、『ごきげんよう』あたりで、芸能人が話した体験が「世にも化」されるなんて日も来るかもしれない。勝俣州和が話した「張り紙の多い温泉」の話なんて、世にも的に膨らませられそうだ。




 と、まあ、「世にも」の放送が近づくと、毎度毎度、こんなことを妄想しているわけです。