グズと地デジと砂嵐

 たしか、『伊東家の食卓』で紹介された裏技だったと思うが、小さな子供がグズった時に、テレビの砂嵐画面を見せるとおとなしくなる、というのがあった。本当かどうかは知らないが、あの音は、母親の胎内の音に似ているらしく、ゆえに子供のグズりが治まるのだとか。

 しかしながら、地上デジタル放送に完全移行してからは、あの「砂嵐」ともあまり出会えなくなってしまった。地デジにおいて映らない画面は、真っ暗な画面か、とぎれとぎれの映像の中に「電波が弱いです」だのと文字が表示されるだけで、あのザーッという懐かしき映像と音が流れることはない。地上デジタル放送では、グズる子供をおとなしくさせることができない。

 小さな子供のようにグズることはさすがにないが、心の奥底は、小さな子供以上にグズである私は、なんだかあの砂嵐が好きで、たまにあの画面をぼんやり見ていたのだが、上記のように地デジでは見られず、かといってわざわざアナログ放送にチャンネルを切り替えるのも面倒臭いので、しばらくあの画面を見てない。それゆえか、近頃の私は、近年稀に見るグズぶりである。

 また、アナログ放送の場合、電波が弱まると画質が劣化し、白黒のようになることはあっても、まったく見られなくなることはなかった。地デジの場合、完全に画面が消えてしまう。アナログの頃は、見ずらくとも、HTBの番組の内容を理解することはできたのだ。今はできない。そんなストレスも、私のグズぶりをより酷くしている。