セイギのミカタは反省しない

 反省しないというよりは、敗因の考察が下手なのかもしれない。
 聞こえてくる「反省」は、もっと大きな声を上げれば、もっと本気になれば、もっと人が集まれば……そんなことばかり。やり方が間違っていたなんてことは考えない。根本的に間違っていたなんて、考えるはずもない。しまいには、味方につかなかった者への罵倒がはじまったりもする。
 そんなヒーロー気取りの者に、冷静さを失わない者が好印象を持つはずはないんだよなあ。

 ――――――――――――――――――――――――――――――

 映画学校の大教室で、ゴキブリが一匹、蜂のように飛び回って学生たちがパニックになる夢をみた。本来、ゴキブリはそのような飛び方はしないのだが、夢の中のゴキブリはおかまいなしで、挙げ句に私の方に飛んできて、ひっついた感触によって丑三つ時に飛び起きるハメになった。

 私は北海道の辺境に生まれ、高校を卒業するまでは、ほぼその土地に根を生やしていたから、ゴキブリをはじめて見たのは、映画学校入学後のことである(札幌で出くわすことはなかった)。日本映画学校という場所は、はっきりいって不衛生なところで、今から考えれば初遭遇は入学後しばらくしてからだったが、もっと早く出くわしていても不思議ではなかった。そして、ヤツは初遭遇でいきなり飛んでみせた。その瞬間、私の中での忌むべき虫ケラ第一位の座に、蜘蛛を蹴落として君臨することとなった。

 そういえば、以前『さまぁ〜ず×さまぁ〜ず』で、ゴキブリの格好良さは何かというような話題になり、「たった一匹で、スタジオ中をパニックに陥らせることができること」が結論として挙げられていた。刃物を振り回したり、銃を乱射したりしない限り、人間一人では、なかなかここまでのパニックは起こせないわけで(いかなる人気者でも、当然興味を持っていない人間はいるわけで、そしてその数はおそらくゴキブリを恐れる人間より多い)、やはりヤツの力は群を抜いているわけだ。