湿っぽい気候の話はなしにしよう - 美月雨竜の「感じるな、考えろ」

　どうも、ここ何日か、気候が身体に優しくなく、実際に地元新聞のお悔み欄を見ると、高齢の方が大勢亡くなっており、ただでさえ元気が溢れているタイプではない私は、ちょっとがんばるとすぐに布団にもぐりこみたくなり、そのまま意識を失ったりしている。きっと、私も順当に年齢を重ねていけば、このような気候の日にぽっくりと逝くのだろう。それはそれで、人生の幕引きとしては穏やかなものかもしれないが、はたして善人とは言えない私に、そんな穏やかな最期が許されるのだろうか。いや、許してくれるのであれば、許してほしいが。

　それでも関東在住時よりはマシなわけである。関東在住時、夏の暑さと湿気が容赦なく私を責め苛んでいる時期などに電車に乗ろうものなら、あまりの顔色の悪さに何度も近くの人に心配されたものである。綺麗な女性からの逆ナンパなど容姿的にも内面的にもあり得ない私ではあるが、綺麗な女性に「大丈夫ですか？」と声をかけられた事なら2、3度あるわけです。ただし、男子としての喜びを感じていられるほどの余裕があれば、そもそも心配されるような顔色にはなっていないわけで、つまりその時点では「暑さと湿気にやられているだけです。ご心配なく」と、声にならない声で感謝を述べるしかできなかった（そんな状態の人間に「ご心配なく」と言われても、老若男女問わず心配しないではいられないだろうが）。

　しかしです。そんな湿っぽくて湿気っぽくて辛気くせえ話ばかりではなく、ちょうど立て込んでいた仕事やらなにやらが少し整理できたので、かねてから「久しぶりに観てえなあ」と思っていた、「強い奴が出てきたぞー！」→「悪い奴も出てきたぞー！」→「戦ったぞー！」→「やっつけたぞー！」という単純明快バカ映画を何本か観ることができました。まあ、全部アーノルド・シュワルツェネッガー主演作ですがね。

　「総合系バカサイト　ホークのやつらか俺たちか」（http://www5a.biglobe.ne.jp/~hawk13/index.html）という、たいへんゴキゲンなサイトがあるのですが、ここの「バカ100連発」というコーナーで記念すべきバカ一発めとして紹介されているのが、何を隠そうアーノルド・シュワルツェネッガー様。で、ここでホークさんは「映画館で『シュワルツェネッガー』という名前を目にしただけで号泣していた」と語っている。

　私は、さすがに号泣はしていなかったのだが、でも何か「シュワルツェネッガー」という名前を目にすると血液が沸騰するような、武者震いするような、麻薬的な高揚感を感じていたのは事実であり、一歩間違えば、この正気とは言えない領域に陥っていたのだろうなと思う。だいたい小学校1〜4年くらいの頃の話だ。昨今、巷にはびこる悪しき反知性主義とはまるで違う、もっと根本的な、ある種、生命の根源みたいなものに肉薄するような、「気持ちの良いバカ」とでも言うべき、理屈を超えた感動というか……（バカみたいな言い回しだが、バカな話をしているのだから、たぶんこれでいい）。

　ロジャー・コーマン閣下が「映画に必要なのは、おっぱい、カーチェイス、それでも足りなきゃ爆破！」みたいなことを言っていたが、この「それでも足りなきゃ爆破」というのが重要で、なんでしょうね、人間やはり「すべての始まり」たるビッグバンに繋がるようなものには、無意識に惹かれるのではないかと思ってしまいます。なんで花火に世界中の人間が惹かれているのか、というのも、きっとそういうことなんじゃないかと思ってみたり。で、シュワルツェネッガーというのは、存在そのものが一種の「爆破」みたいなものなのである。

　ただ、シュワちゃんのようになりたいか、と問われれば「なりたくはない」としか答えようがない。友達にはなりたい。あまり評判の良くない『ラスト・アクション・ヒーロー』だが、私はかなり好きで、それはたぶん、この「友達にはなりたい」という願望を疑似的に叶えてくれるからだろう。（なかったことにしたいのは、むしろ『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』。ユマ・サーマン演じるポイズン・アイビーのケバさも、どうも受け付けない。ちなみに、ポイズン・アイビーの「フェロモン攻撃」を予告編で見た時、「臭い息で攻撃するんだろうか」と思った。『有言実行三姉妹シュシュトリアン』とかを好んで観たりするから、そういう発想が生まれるのだろう。柴田理恵演じる「ETおばさん」の話である。でも、まあ『FFⅧ』のキスティスなんて例もあるわけで…）。