数百の瞳

 「マンガを数百冊所有している」というのは、はたして自慢に値することなのだろうか。もちろん、「マンガなんて低俗なものは云々」という話ではなく、単純にその冊数の話である。

 たとえば、私は小学生くらいの頃だと結構マンガというジャンルをバカにしていたところがあり(当時、同世代〜ちょい上世代くらいの連中が読んでいた少年マンガが基本的に苦手だったせいもある。今でも、その頃のマンガは好きではない)、ちゃんと読むようになったのは高校くらいからで、それもいわゆる「マンガ好き」の人と比較すれば、なんてことはない程度のものだったと思うのだが、それでも今所有しているマンガをざっくり数えてみれば、1000冊は確実に超えている。「マンガ好き」なら、もっと読んでいるものだと思っていたのだが、そうでもないのだろうか。そんなことはないと思うのだが。

 そもそも、「数百作」ではなく「数百冊」だと、『ゴルゴ13』と『こち亀』を揃えただけでも400近くいくはずなので、そこにもう1、2作足せば、立派な「数百冊」だろう。だが、その人が所有している「作品数」は3〜4作だけである。それに、巻数の稼げるマンガは、いわゆる「少年マンガ」「少女マンガ」であり、ガロ系だとか岡崎京子あたりのラインとは無縁のまま「数百冊読んできた」と誇っている可能性もあり、それが悪いとは言わないが、あまり「幅広いマンガ体験」とは呼べない気もする。

 まあ、マンガに限らず、数だけで自慢する時点でどうかという話でもあるが(活字中毒には、読むことだけに満足して、中身は理解できていないというケースが多々ある)。