小児ぜんそくを患っていたこともあり、30歳になろうかという現在もなお、もふもふしたやつらと長時間戯れるような行為は、意識的に控えている。
そんな私だが、最近、たぬきの動画を眺めることが増えた。
たぬきはもふもふしている。犬や猫より、もふもふしていると思う。もふもふしているものが好きなのかと問われれば、別にそういうわけでもないのだが(もふもふはぜんそくの大敵である。哺乳類よりは、基本的に爬虫類派だ)、たぬきはもふもふしているだけではなく、ころころもしている。声を大にして「動物が好きだ」と言えるわけでもない私だが、なんとなく、あのもふもふころころぶりは好ましく思える。ただし、いくらもふもふころころだからといって、猫よりは犬のほうが好きだとはっきり言えるが、犬よりたぬきのほうが好きなのかと問われれば、即答はできない。では、なぜたぬきの動画を眺めることが増えたのか。
私が生のたぬきを見たことがないからである。犬や猫は、飼っている人も多く、野良も近所をうろついている。ゆえに、わざわざ動画で見る必要性を感じない。そりゃあ、『和風総本家』のマスコットである豆助くらいアイドル性の高いもふもふなら、金を払ってでも眺めたくなる気持ちも理解できるが(ちなみに、『和風総本家』という番組そのものが好きなわけではない。私は、基本的に「日本の職人」というものには、あまり惹かれないし、「工場の機械」などはおっかないとしか感じないのだ。スティーヴン・キングの『人間圧搾機』なんて、大トラウマ小説なのである)、単純に「犬」や「猫」で検索して出てくる動画は、撮影者や飼い主の存在がうるさく感じてしまうものも多い。ツイッターなどのアイコンを犬や猫にしている人もいるが、その人物が不快な者であった場合、アイコンにされている犬や猫と同じ種類、あるいは見た目が似ているやつまでも嫌いになってしまいそうになる。結局、いちばん嫌いな動物は人間なのだろう。人間以上に嫌いな生き物なんて、オニグモとゴキブリとフナムシとゲジくらいだろうか。こいつらだって、場合によっては、あんな奴よりマシだと感じることさえある。
残念ながら、私の家の近所には、もふもふころころのたぬきがうろついていたりはしない。犬と猫以外にうろついているのは、キツネとリスと鳥である。家畜を含めても良いのなら、近所に牧場もあるので、牛や馬はいる。あまり目にはしないが、鹿もいるし、たぶん熊もそう遠くないところで生きている。しかし、たぬきはいない。いないから、映像を眺めるしかない。映像なので、毛が飛んでくる心配もない。
現代日本において、たぬきが出てくる創作物の中でも、おそらく知名度が上位に位置するであろう、高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』は、VHSとDVDを所有している。森見登美彦先生の『有頂天家族』も、文庫本やアニメ版DVDなども含め、ひととおり揃っている。たぶん、私がいちばん好きなマンガである『それでも町は廻っている』でも、主人公・歩鳥が飼っているのはたぬきである。ただし、歩鳥やたぬきのジョセフィーヌも好きだが、このマンガでいちばん好きなキャラクターは、やっぱり紺先輩だ。
人間以上に嫌いな生き物はそうそういないが、ジョセフィーヌを「ポンちゃん丸いねー」とあやしていた紺先輩は、全生物の中でもトップクラスに好きです(実在してないけど)。
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