壁なんか見たくない

 何年も貼られたままのポスターというものになぜか惹かれる。私が買い出しなどのために、頻繁に足を運ぶ街には、いまだに映画『リトル・ブッダ』のポスターが貼られている店があり、近くに行くと、ついついぼんやり眺めてしまう。日本公開は1994年なので、おそらく20年以上、あの場所に貼られたままなのであろう。小学校低学年の頃、まだ真新しい姿を見た記憶もある。

 古い理容店なんかには、そんな貼られたままのポスターがよくあり、しかし、理容店で髪を切ってもらうことなど基本的にない私は(ただでさえ、年に二回くらいしか髪を切らないうえに、行きつけの美容室がちゃんとある)、気づかれないように外から眺めることしかできない。

 そもそも幼児の頃から、壁にポスターやチラシなどを貼るのが好きだった。本や映像ソフトなどを、まあまあそれなりには所有していながら、壁が埋まってしまうような背の高い棚をあまり用意せず、土地の余った北海道で元農業という実家(都会と比べて敷地が広く、さほど金回りが良くなくても、家が二、三軒あったり、大きな倉庫があったりというのが珍しくない土地柄。私の家にも、資料庫として利用している離れがある)の利点をフルに活用し、なるべく三段くらいのカラーボックスを増やすだけで対処し続けているのは、ポスターを貼るスペースを確保するためである。

 貼るものは、別に自分の趣味に合うものでなくてもよい。小学校や中学校の頃など、学校で不用になったインフルエンザ予防啓蒙ポスターなんかをもらってきては、意味もなく自室に貼ったりしていたくらいだ。新聞の折り込みチラシが貼ってあったりもする。

 どうも、壁そのものを見るのが嫌いなのではないかと思う。また、なんでもいいから情報に囲まれていたいという、妙な欲求があるような気もする。それで幸せになっているかと問われても困るけれど。

リトル・ブッダ HDマスター [DVD]

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