静養日記23 〜ハエだって落ち着きがあれば、ここまで嫌われない〜

 特にこれといって書き記すことのない日々が続いている。静養中だから、それで良いのである。これは書き残さねばならぬ、というような出来事が次から次へと起こっていては、とても静養などできはしない。

 たとえば、なんとなく見物にいった大きな湖にて、幻の湖底人と遭遇したりでもすれば、私はその状況を事細かに書き記さねばならなくなる。なにより、幻の湖底人がどんな姿でどんなお人柄なのかは知らぬが、そんな者と出会ってしまったということそのもののインパクトにより、たとえ幻の湖底人のお人柄がたいへん親しみやすいものだったとしても「静養」という言葉からは程遠い精神状態に陥ることは避けられない。なので、幻の湖底人なんぞに出会うわけにはいかないのである。

 幻の湖底人に出会わないためには、幻の湖底人が出没しそうなところへ足を運ぶのを避けなければならない。湖の見物などもってのほかである。かといって、山へ見物に行けば、幻の山村の住人に襲われるかもしれないし、川へ見物に行けば河童に胡瓜を買い与えてやらなければいけなくなるかもしれないし、ツイッターで私を不愉快にさせるおっさんは、本人いわく「その辺に転がってそうなおっさん」らしいので、街へ出たらそんな奴だらけという可能性が高く、それでは静養など遠い夢。

 なので、おとなしく家にこもっているわけで、そうなると「今日は屋内に迷い込んで来たハエを一匹、なくなく退治した」程度のことしか起きないわけであるし、何もしない、何も起きないとはいっても、ああだこうだと考え事をしたりはするものの、書き記すほどのことを考えはじめると、これはこれで静養とは言い難くなるため、茶をすすりつつ深呼吸などしてみたのが2017年9月13日における美月さんの主な出来事だったりするのである。