ブログ移動の疲れも原因のひとつだと思います。

 網戸の隅っこに季節の移ろいを捉え損なったらしい蠅が一匹張り付いていて、軽く小指で小突いてみたらそのままポトリと地面に落下。すでに息絶えていたのかしらと思ったが、よく観察すると、かすかに足が動いておられる。まだ生への執着を捨ててはいなかったらしい。たいしたもんだと感心するも、私には蠅の延命処置などできるはずもなく、いっそひと思いに殺ってしまったほうが良いのではないかなどとも考えたが、私自身、いくら初雪が遅れているとはいえ、この時期の肌寒さのなか、これ以上、家の外で呼吸し続ける気にもなれず、蠅に武士の情けをかけてやるような博愛主義者ではなかったなと思い直し、さっさと屋内に逃げ込んで、暖かいほうじ茶など啜りながら、窓の外で蠅なりの走馬灯でも見ているであろう風前の灯となった小さな生命について思いを馳せる振りなどしてみながら、2キロほど先にある、あまり仕事が丁寧ではないことで有名な同級生の家の豆畑は、いったいいつになったら収穫作業を終えるのだろうなあ、我が家の目の前にある働き者で有名な知人の畑など、すっかり作業は終わっているではないか、などと他人の心配をしている振りもしてみるのだが、いかんせん、今も昔もさほど交流の深くない同級生の心配など、博愛主義者とは程遠い私には、たとえ振りでもそう長いこと継続することはできず、すぐに人間なんぞどうでもええわいと考え、人の手の届かぬ空など眺めてみると、白鳥の群れが飛んでゆく姿が目に入り、やっぱりもう冬なんじゃないか、寒くなるなら早いとこなればいい、どうしてこの時期に、たまに汗ばむような暖かさを寄越してきやがるのだ、おかげでどうにも体調が優れないではないか、無性にみかんの缶詰を開けたくなるのだが、これはひょっとして風邪をひいているのではないか、そう思って体温計に仕事をさせてみたところ、微熱が観測されてしまったため、まとわりつく眠気に抗うこともやめて、おとなしく布団に入る。