ヒッチコックは鳥がお嫌い

 どうも家の近くに鳥の巣があるらしく、ピーピーピーピーと小鳥の鳴く声が頻繁に聞こえてくる。私は鳥に詳しいわけではないので、この鳴き声だけで種類を特定することはできないが、家の換気扇に巣が作られてしまったわけでもなく、ちょっとばかりうるさく感じてしまう以外には今のところ特に被害もないので、どんな鳥がどこに巣を作っているのか調べることもなく、このまま放置しておくつもりである。

 そういえば小学生の頃、校舎の通風孔の壊れていた部分に脚を引っかけてしまった小鳥を同級生たちと助けてやったことがある。「自然を愛する心優しい子供だった」ということにしてしまっても良いのだけれど、実際のところは「ほっとくと鳴き声がうるさい」「死んでぶらさがったまま蛆でも湧いたらかなわん」「いつだったか蛆の湧いたスズメの死骸が転がっていたけど、あれも始末が大変だった」というすさんだ議論がその場のいた面々で交わされたうえでの救出劇であり、心優しい子供たちというよりは『デスファイル』シリーズあたりで紹介される極端に治安の悪い土地の死体処理業者の姿に近い。

 もっとも、善意や良心というものは、あくまでも「そういう思い」であるということでしかなく、良い結果をもたらすかどうかとは無関係である。悪い結果をもたらすことだって多いし、底の浅い正義感や善意はむしろ悪意より質が悪い。短絡的な善意によって引き起こされた悲劇に対し「善意だったのだから」と言い訳するようなら、杉下右京さんあたりから激しく叱責されることだろう。

 私がどこか近くにあるらしい鳥の巣を放置するのも自然を愛しているからではなく、自然を壊すほどの悪意がないだけ、あるいは鳥に冷たくあたることによる動物愛護的観点からの社会的制裁や鳥本人(本鳥?)からの復讐が怖いだけだと正直に告白して本日の雑文を締めることとする。

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