単体でいればかわいいものです

 昨日、アスファルトの上を移動するミミズを久しぶりに見た。別の場所で目にすることはあるのだが、アスファルトの上のミミズは久しく死骸すら見ていなかった。定期検診のため歯医者に行く途中、バスの窓から強い雨の降る景色を眺めていたところ、信号に捕まった時に視界に入ってきたのだけれど、よせばいいのにどんどん車道側に進んでおり、いずれ轢かれてしまうのだろうがどうすることもできず、救えたかもしれない命を見捨ててしまった。

 ミミズごときに何をと思われるかもしれないが、私はどうも幼い頃から、うにょうにょと健気に這い進むミミズが嫌いにはなれず、しばしばじっと眺めたりしていた。虫は嫌いなもののほうが多いし、イトミミズの塊なんかには出くわしたくないのだけれど、そこそこの太さのあるミミズの這う姿には妙な愛嬌を感じた。

 とは言っても、潔癖症に近い性分ではあるので、素手でつかんだりすることはなく、救えなかった昨日のミミズにしても、もし徒歩で出くわしていたのなら、そっと靴の先かなにかで潰さないように移動させるくらいだったことだろう。

 さて、ミミズのいる土地は良い土地と言われることがあるが、ミミズは土の悪い部分を取り除くからこそ益虫といえるので、ミミズがたくさんいるというのは、むしろ土が痛んでいる証拠という話もある。私の家の周りは、働き者の農家のみなさんによってしっかりと手入れされた畑ばかりなので、舗装された道路に這い出てくるほどのミミズは住んでいないのかもしれない。逆に、昨日のミミズ君がいた辺りは住宅地近くで、あまり綺麗とは思えない家庭菜園が見えたりもした。おそらく、あの家庭菜園の駄目な土をせっせと耕しているうちに道路に迷いこんでしまったのだろう。どこの誰が管理している菜園かは知らないが、働き手を一匹見殺しにしてしまったかもしれないので、ここに謝罪の意を示しておこうと思う。たいへん申し訳ありませんでした。

ミミズと土 (平凡社ライブラリー)

ミミズと土 (平凡社ライブラリー)