『この西瓜ころがし野郎』(14)

 そんな新鮮町の住人のなかに西瓜の中身について調べたくなった者がおり、それまでは周りから珍しもの好きのスプーキーと呼ばれていたが、西瓜ころがしの野郎のせいで西瓜知りたがりのスプーキーと呼ばれるようになってしまい、幸いにもスプーキーな彼はなんと呼ばれようと気にすることもなく、巻き添えくってスプーキー呼ばわりされるような家族も友人もおらず、西瓜ころがしの野郎の罪がこの一件で増えることもなかったのだが、西瓜ころがしの野郎の罪なんぞ増えてしかるべきとも思うわけで、私は会ったことも目にしたこともない新鮮町の珍しもの好きのスプーキーを西瓜知りたがりのスプーキーと呼ぶことにまったく抵抗を感じることもない、ゆえに珍しもの好きのスプーキーではなく西瓜知りたがりのスプーキーであるこの男は、その辺で跳ねていた西瓜をいくつか捕まえると、自宅の解剖台の上でミシンやこうもり傘の手を借りながら西瓜を抑え込み、鉈やら金槌やらで西瓜の中身をさらけだすのだが、西瓜知りたがりのスプーキーが前世の別世界で観た映画のように臓物が現れることはなく、気につく点と言えば種がやけに少なく感じることくらいで、しかしそれは、西瓜たちが勝手に繁殖していることからもわかるとおり、種の必要性を西瓜が失いはじめているからであって、いまさら種が少なく感じることを公にしたところで西瓜知りたがりのスプーキーは西瓜知りのスプーキーと呼ばれるようになることはなく、七つ目の西瓜をこうもり傘の先で貫いたあたりで、これ以上中身を調べてもどうにもならんと西瓜知りたがりのスプーキーも考え直し、中身を出されてへばった西瓜に頭を突っ込んで、今度は中身を余すことなく喰らいはじめた。