『この西瓜ころがし野郎』(17)

 西瓜の尻尾のごとく激しく振り回され続けた西瓜知りたがりのスプーキーの身体は、西瓜が西瓜知りたがりのスプーキーの家から西瓜ころがしが転げ落ちているこの土地まで飛んでくるまで至る所でちぎれ飛び、ちぎれ飛んだ身体の一部もまたちぎれ四散し、西瓜にも西瓜知りたがりのスプーキーにも西瓜ころがしにも縁もゆかりもない土地に降り注ぎ、それらは土地の栄養を吸って西瓜ころがし憎みの小さな化け物となって蘇り、世にもおぞましい姿と咆哮で土地の者を震えあがらせつつも、彼ら彼女らには決して手を出さず、ひたすら西瓜ころがしの姿を求めてさまようのであったが、哀しいことに西瓜知りたがりのスプーキーの四散した身体が大きな割合を占める怪物には、西瓜たち独自の伝達方法が通じず、小さな化け物のさまよいは余程の幸運を持ってしか治めることはできず、恐怖に屈した土地の者の手によって潰されたり焼き殺されてしまうことがほとんどで、しかし小さな化け物たちの潰されたり焼き殺されてしまったことへの憎しみは、西瓜ころがしに対してのみ向けらていたので、再び異形の姿で蘇った怪物たちも土地の者を襲うことは決してなく、幾度か再生と退治を繰り返すうち、土地の者たちが先に西瓜ころがしの存在に気づき、蘇った化け物を介護したりする者も現れ、なかには共に打倒・西瓜ころがしの狼煙を上げて旅の仲間として化け物と行動を共にする者も少なくなく、それらの流れは世界中でほぼ同時発生的に巻き起こり、私たちが西瓜ころがしの転げ落ちぶりを笑っている今この時にも、歩みの早かった一団がこの土地に踏み入ってきており、おかげで私はしばらく指を庭の隙間に突っ込む必要もなくなったのだった。