自身の食生活に魚類が足りていないのではないかと感じはじめた私は、生臭さが苦手なものだから普段はあまり近づかないようにしていた魚売り場へと決死の潜入を図ったものの、切り身はともかく、お頭つきの魚が陸にあげられて口をぱかっと開いている姿は改めて見てみると実に間抜けだなあ、こんなもの食って本当に賢くなるのだろうか、などと阿呆なことを考えはじめ、いかんいかん魚が足りていないからこんな阿呆な考えに憑りつかれるのだと邪念を追っ払って手を伸ばそうとしたものの、捌いている最中にアニサキスがうにゃらうにゃらと現れたら嫌だなあ、「ひょへええ!」なんて間抜けな声をあげてしまっても「カワイイ」なんて言われるはずもなく、むしろアニサキス以上の不気味さを演出してしまうだろうと思い至ったところで、そもそも自分が魚なんぞ捌いたことがなかったことに気づき、魚を捌くつもりが自分の手を捌く危険性も充分にあり得ると戦慄し、結局は魚肉ソーセージだけを購入してしまい、買い物の内容自体に知性が感じられないことを嘆きつつ、購入したソーセージを昼食として調理もせずにそのままもむもむと腹に収めているその姿は実に間抜けなものだったと思われ、なにかもう色々と手遅れなのではないかという気もするのだが、希望を持つことは別に罪ではないはずなので、来年の今ごろには、もう少し賢そうな雰囲気を醸し出せているはずだと自分に言い聞かせることにする。
せめて切ったり炒めたりすれば、僅かながらも文明人らしさを演出できたのではないかと指摘する声もあるだろうが、その昔、どこかの国では踊りながらソーセージを調理していて、誤って自分の鼻を切り落とした阿呆がいたらしく、魚不足ゆえか阿呆気味になっている自分が、それほど高い鼻を持っているわけでもないのに同じ過ちを犯すのではないかとちょっと不安になり、可能な限り包装を丁寧に開けることのみによって辛うじて知性を滲ませてみた私の努力を面と向かって馬鹿にすることだけはご遠慮願いたい。
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