スローライフはいくらかの想像力を犠牲にした上に成り立っている

 昔、『世界まる見え!テレビ特捜部』で意中の相手をその気にさせる「愛のフェロモンドリンク」なるものが紹介されたことがあった。詳しい作り方は忘れてしまったが(紹介された回の録画ビデオはあるのだが、わざわざ資料庫に保管されてある大量のビデオから探すのは面倒である)、たしかミルクをベースにバラの根など媚薬的なイメージのあるものをいくつか投入したうえで、自分の汗、唾液、髪を燃やした灰を入れるというもので、最初から双方が強く惹かれあっていない限り、バレでもしたらえらいことになるような代物である。スタジオにもフェロモンドリンクが登場して、ビートたけしがゲストの女性(たしか細川直美)のフェロモン入りであることを期待し率先して飲んだのだが、結果は林家ペーのフェロモン入りだった。

 それにしても、作る側の健康状態や相手との関係性によっては、かつて大泉洋が作り出した魔の飲み物「コーンヒー」を凌ぐ殺傷能力を持つことになるであろう飲み物がゴールデンタイムに紹介されていたというのは、なんだか恐ろしくもある。もっとも、世界にはラブアップルなど色恋にまつわる少々眉をひそめたくなるような習慣というのは他にも沢山あって、性別を問わず、片想い中の者のなかには藁にもすがる思いで実行した者もいるのだろう。そして、何も知らずに与えられた側が原因不明の体調不良に見舞われた、なんてことも起きていたかもしれない。私には無縁の話であるが、もてる人間は注意したほうが良い。

 しかし、妙な風習に限らず、一般的な飲食店等においても、阿呆な店員の悪ふざけで汚染された食物が多く出回っているかもしれない昨今、極度の潔癖症は、もう自ら土地を開墾し作物を育て、盛り付け用の皿も焼き、育てた作物を自分で調理して食すというシェフ大泉のような生き方をしなければならなくなる(シェフ大泉の料理は「遅い・不味い・危険」で有名だが)。いわゆる自給自足の生活であるが、そもそも極度の潔癖症に自給自足生活など不可能に思える。どこかで無駄なまでの想像力を抑え込み、折り合いをつける他ないのだが、それができないのが潔癖症というものである。幸い、私はそこまで極端な潔癖症ではないが、いつ症状が急激に悪化するかわからない。そうなれば、仮に金銭的援助を受けたとしても生きていく術はない。無菌室で超衛生的な生活を送る姿を見せものにして費用を稼ぐという手もあるかもしれないが、そんなことができるほどの度胸があれば、そもそも極度の潔癖症になど陥ってはいないだろう。

 結局、今の私にできるのは、目の前に置かれた食物がそれまでに辿ってきた道程を必要以上に想像しないようにすることくらいである。考えなければ人間ではないが、考え過ぎれば生きていけない。

DVDの1×8いこうよ!(2)YOYO’S、北の大地でコメ作り!の巻

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