ジョギングおじさんの健康を考える会

 久しぶりの積雪。虫と同じで雪がなくなると、やかましいエンジン音を轟かせる田舎特有のバカ車乗りが現れはじめ、すでに2月の下旬あたりから特に害の大きい者がこちらの静養などお構いなしに遠くからもよく聞こえる頭の悪い轟音を響かせたりしていたのだが、これで数日くらいはあの害虫どももおとなしくなるだろう。いっそ滑って大怪我でもして、一生車なんぞ運転できない身体になってしまえばいいとさえ思うのだが、都合よく連中だけが被害を被るようなアクシデントというのはなかなか起きず、大抵は無関係な人や建物まで破壊され、最悪の場合だと被害が大きいのは関係ない者ばかりで、当のバカ共は無傷なんてことにもなりかねず、いくら腹立たしい存在とはいえ、本気で事故を願ったりしてはいけない。一時の感情の爆発だけでおさめるべきである。

 そんな害虫車乗りでさえおとなしくなる積雪という自然現象のなか、家に居場所がないのか知らんが、大きな畑の多い土地ゆえに家と家の距離が遠く、近い順番に家を4軒ほど回るだけでも大変な走行距離になってしまうこの地域の住民のほぼ全員が目撃しているジョギングおじさんは今日も元気(そうにはあまり見えないのだが、それはいつものことである)に我が家の窓から見える景色の中にも紛れ込んできており、やはり馴染みのじっちゃんが言っているように「ゆるやかな自殺」なのではないかと不安にもなる。住民のほぼ全員が目撃しているにもかかわらず、誰一人としてジョギングおじさんの素性は知らない(どうやら隣町に住んでいるらしい、というくらいしか情報が届いてこない)うえ、あまり愛想の良い感じでもないため、誰も話しかけられずにいる。まあ、話しかけることが出来たとしても、ここら一帯の住民が内心感じている不安を伝える勇気などないだろう。

 目立ちたいのだったら、あの害虫たちも雪の中を薄着でジョギングすれば良い。ガソリン代もかからないし、他人を轢き殺す心配もない。心配すべきなのは自分の身体だけ。安く安全に目立つことのできる良い方法だと思うのだけれどね。