今朝は36度4分

 平日の昼間に歯医者へ行くと、お年寄りが多いせいか、歯の話よりも血圧の話のほうが多く聞こえてきて、私も今朝の血圧とか先生に申告しておいたほうがいいのかしら、なんて考えそうになったけれども、今朝の血圧なんて測っていないし、そもそも毎朝血圧を測らなければならない体になっていない(父は高血圧の気があるので測定器も持っているけれど、私が使ったことはない)。

 日常的に血圧を測ったことはないけれど、中学に入った頃から日本映画学校を卒業して2年ほど経つまでの間、朝と夜に体温は測り続けていた。別に医者から言われたわけでもないのだが、なんとなく自分の体温の推移を知りたくなり、一度はじめるとなかなか辞められない性分でもあったので、1999年4月から2011年3月までの日記には、日付や天気に加えて私の朝晩の体温が書き込まれている。私の評伝が書かれる際には貴重な資料となるだろうが、評伝を書かれるような人物になる気配が微塵もないので、今のところは大学ノートの無駄遣いでしかない。死ぬ前に処分しておくべきなのだろう。

 この、体調管理目的ですらない意味不明の体温測定だが、中学時代には私の他に3名の参加者がおり、「おはよう」の挨拶代わりに「6度4分」「6度2分」などと交し合い、周囲から奇異の目に晒されていたのだが、3名のアホのうち1名は2019年5月15日現在まで欠かさずに体温測定を続けているらしく、今なお奇異の目に晒され続けている可能性がある(他の2名は高校時代に辞めたらしい。ゆえに№2のアホは私である)。ひょっとすれば、奇異の目どころか、体温測定教などという得体のしれない宗教をはじめて、多くの信者を抱えているかもしれない。普通の挨拶をすると見せかけて「6度4分」と言ってみて、もし相手が反射的に「6度2分」などと答えたとすれば、きっとそいつは体温測定教の信者である。もっとも、他人を警戒するに越したことはないが、別に害はないと思うので、今まで通り付き合ってやれば良い。戯れに自分も体温測定をはじめてみるのも悪くない。