ペニー・レイン(Penny Lane)にレイン(Rain)がやってくる

 とある百貨店に久しぶりに足を運んでみたのだが、どうにも店内が蒸し暑く、落ち着いて散策することもできず数分で退散してしまった。私なんぞを店内にのさばらせないために、温度と湿度を高めに設定しているのかもしれない。

 さて、この百貨店、現在はどうだか知らないが、かつては外で雨が降ってくるとビートルズの「ペニー・レイン」が店内に流れた。店員が雨に濡れた客や傘を持った客の来店に備えるための合図として雨がらみの音楽を流すというのは、百貨店等でよく使われている方法らしいのだが(新百合ヶ丘の某生活百貨店では「雨にぬれても」が流れていた)、タイトルの「ペニー・レイン」の「レイン(Lane)」を「レイン(Rain)」と勘違いしているのだとすれば、英語力もなければビートルズに関する知識にも乏しい人が決めてしまったのだろう。しかし、歌詞の中に登場する大雨でもレインコートを着ない男や土砂降りから逃げてきた消防士のことを指して「ペニー・レイン」を「雨の歌」だと判断したのなら、英語力もビートルズ知識もそこそこあるということになる。もっとも、「ペニー・レインのレインはレイン(雨)じゃないでしょう」という突っ込みに対して「歌詞をしっかり読んでみろ。ちゃんと雨のほうのレインも入っているだろ? ハイ、論破」的なことが言いたいだけなのだとすれば、ただの性格の悪い人である。その可能性を考慮すると、わざわざ責任者に問い合わせて本当に「ハイ論破」的なことを言われでもしたら、しばらく気分の悪いまま日々を過ごさなくてはいけなくなるので、確認してみようという気はおきない。まあ、「ペニー・レインのレインは雨のレインじゃねえよwww」なんて指摘したがるような人間も充分に性格が悪いと思う。

 蒸し暑さに耐えられず、私が百貨店の策略に屈して店を後にしてしばらくすると、外ではぽつぽつと雨が降り始めた。「ペニー・レイン」が使用されている理由を確かめる気もなければ、わざわざ戻って現在も店内に「ペニー・レイン」が流れているかどうか確かめる気もなかった。ビートルズのファンではあるけれど、蒸し暑い店内でいかにもなデパートBGMにアレンジされた「ペニー・レイン」を聴いたところで、別に気分が良くなるわけでもない。どうせ安っぽい店内BGMなのだから、馴染みのスーパーの涼しい食品売り場のほうが快適である。そんなわけで、結局この日に購入したのは豆腐と麦茶だけであった。

THE BEATLES 1967 - 1970

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