「汁」の話(ゆるめるモ!のあのちゃんの好物でもある「汁」の話)

 味噌汁は好きなのだが、こうも暑い日が続いてしまうと「少し距離をとろうか」という気分になる。「暑い時こそ熱い食物を」と考える人もいるだろうし、そのほうが身体には良いという話も聞くけれど、あるレベル以上の暑がりになると、いくら身体に良いと言われても摂取している最中にぶっ倒れる恐怖を払拭できない。なんとか倒れずに乗り切ったとしても、身体の内側も外側も熱せられてふらふらである。一日のエネルギー源であるはずの朝食の摂取によって満身創痍となっては意味がない。

 充分に冷めるのを待つのも手であるが、そのためには「充分に冷めるまでの時間」を確保して調理を開始しなければならず、そのために睡眠時間を削るのもどうかと思う。そうまでして、味噌汁にこだわりたいわけでもない。そもそも夏場は味噌汁どころか火を使いたくない。独り暮らしをしている時の私の朝食が基本的にパン食(トーストにすらしない。生の食パンに苺ジャム、野菜ジュース、缶詰の果物というメニュー)だった理由はそこにある。生ごみが出にくいことと洗い物が楽なのも利点である。いわゆる「日本らしい朝食」が本当に減ってきているのだとしたら、温暖化も一因なのではないかと思う。

 ところで、一人暮らしをしてみて気付いたことのなかに、味噌汁に限らず汁物を一人分だけ作るというのは案外難しいというのがある。手順の話ではなく、量の話である。

 液体の中に具を投入して熱を通すわけだが、それなりの量の液体がなければうまく具を煮込めない。もちろん、鍋の大きさや具材の切り方等にもよるが、スープを啜りたかったのに肉じゃが的なごった煮になったり、油断すれば鍋に具が焦げついたりもする。札幌での一人暮らしでは少し多めに作って次の食事に回すなんてこともしたが、神奈川時代には目を離した隙にゴキブリが入水自殺するのではないかという不安があった。極力、生ごみが出ないようにしていたのもゴキブリ対策である。結局、2~3杯を平らげることができそうなほど空腹だった場合の夕食以外はインスタントに頼ることにしていた。調理時間も省け、冷めるまでの時間も確保できる。外敵の侵入を防ぐために監視し続けることだって苦ではない。よって、一人暮らしをしていても、私と汁が長いお別れをすることはなかった。なんだかんだ汁物が恋しいのである。