キウイの泡の中から生まれ出た悪魔ベルゼブブ

 熟した果物を食べると高確率で耳の奥が痒くてたまらなくなるので、果物が手元にある場合はなるべく固いうちに食べなければならず、量が多かったりすると難儀なのだが、果物自体は嫌いではないので無駄にしないよう糖尿病上等の精神で立ち向かっていることがたまにある。

 そんな性分のせいか、腐敗した果物というのが近づくのも嫌なほど苦手で、果物に限らず腐敗した食品を好む者などそうそう存在するとは思えないし、実際、潔癖症の気のある私などは知人から病的と言われたことがあるほどに食品管理に神経を使っているのだけれども、そのなかでも特に苦手なのが腐敗した果物なのである。

 果物に限った話ではないが、ぱっと見は問題なさそうなのに、動かしてみると地面に触れていた部分が激しく傷んでいるということがよくある。数年前、用があってお邪魔させてもらった某氏(氏の名誉のために名前だけでなく、その他の詳細も伏せる)の家に“なにか嫌な雰囲気”を漂わせるキウイフルーツがあった。某氏は気にもとめていないようで、たしかに遠目だと何の変哲もないキウイフルーツなのだが、私の腐敗物察知センサーが危険信号を発していたので、その旨を告げた。その直後、私は地面に面していた部分が白く泡立つキウイフルーツを目撃することになった。

 今でもたまに食器用洗剤の泡で、あのおぞましいキウイフルーツの姿を思い出してしまうことがある。かといって、汚れた食器をそのままにしておくこともできないので、吐き気に耐えつつ洗浄するわけだが、あのキウイフルーツも、単に泡立った食器用洗剤が付着しただけであれば、私がいらんトラウマを植え付けられることもなかったのだ。腐敗物察知センサーだけでなく、今後は食品管理の下手な人間を察知するセンサーも脳内に設置したほうが良いかもしれない。