スポーツに関する知識のほとんどは衝撃映像で学んだ

 一時期ほどの憎悪はさすがに薄れたものの、基本的にスポーツは見るのもやるのも好きではない私にとって、スポーツに関する知識の大半はテレビの衝撃映像特番によって得たものであり、最も憎く思っている日本プロ野球など、中継すら2分以上見続けたことがないくせに、「グラッデン」(かつて巨人に在籍していたアメリカ人選手)なんて名前をいまだに記憶しているのは、何度も衝撃映像や珍プレー好プレー集で紹介された大乱闘のきっかけとなった人物だからである(日本プロ野球に関して言えば、最近はナイツの漫才によって得た知識もある。「10ゲーム10ゲーム後藤の振り逃げ……」)。ゆえに、競技の性格上、衝撃映像特番で紹介されることが比較的多いラグビー/アメフトは、興味がないくせに断片的に見た映像は割と多く、逆に紹介されにくいバレーボールの映像などは脳内の映像資料アーカイブスにほとんど収納されていない。

 さて、スポーツ関連の衝撃映像でよく見られるもののひとつに、競技中に何者かが乱入してくるというのがある。暴漢や暴徒と化したファンといった深刻なものもあれば、迷い込んできた動物といったほのぼの系、酔っぱらいや悪ノリした目立ちたがり屋など、乱入者のタイプも様々である。1994年のカリフォルニアの競馬場では、馬に蹴られて死のうと考えた自殺志願者が乱入するという珍しい事件もあった。一般人がオールブラックスのタックルをまともに受ければ充分に命の危険があるだろうから、ラグビーでも起こり得そうな気はする。非常に盛り上がっていた今年のラグビーワールドカップのニュースを少しチェックしてみると、自殺志願者ではなかったようだが、興奮したファンの乱入騒ぎは何度かあったようである。10月5日に大分で開催されたオーストラリア対ウルグアイの試合では全裸男の乱入もあったらしい。一国を代表するラグビー選手に全裸で立ち向かうとは、なんとも無謀極まりないが、プロの試合なのかアマチュアの試合なのかはわからないが、独走状態のラグビー選手に文字通りの裸一貫で突撃した大バカ者の映像は私も見たことがある。紹介された番組のナレーションにおいて「ポジション不明、全裸のラガーマン」と称されたその男は、経験者とは思えない貧弱な細身ながらも、しっかりと選手の腰にしがみついて独走を阻止していた。相手選手であれば敵ながらあっぱれのファインプレーだったのだろうが、ただの乱入者であるから現場は混乱、試合も中断、しばらくして画面の隅をちょこちょこと逃走している姿が映り込んだかと思うと、すぐに警備員らしき人物にタックルされて御用となっていた。逃走しようとする力が残っていたのだから、選手へのタックルの際に大した怪我は負っていなかったのだろう。ラグビーの経験者ではなくとも、なんらかの格闘技や武術の心得はあったのかもしれない。単に強運の持主だっただけかもしれないが。

 それにしても、ただでさえ一般人より強靭な肉体を持っているはずのアスリートのなかでも、見るからに屈強揃いなラグビー選手に意味もなく立ち向かっていく者の思考回路というのは、いったいどういうことになっているのだろう。それだけ観戦に熱狂する者が多いということなのかもしれないが、それがもとで怪我人や死者が出て、競技自体が衰退するなんてことになれば、選手の活躍も浮かばれないので、何事も冷静さを保つための努力は不可欠のように感じる。