めんないがらすのこのあたしとは……

 少し遠出した先で、陰鬱な雰囲気の時代劇くらいでしか見たことのなかった木に吊るされたカラス(本物)を初めて目にした。季節柄、草木の葉も多くは落ちて枯れ、木枯らしも吹き、十勝ならではの周囲に建造物がほとんどない大平原という景観とも相俟って、斬りたくない相手を斬ってきた座頭市の後ろ姿が見えてきそうで、その場にとどまりすぎると自分まで斬られてしまうのではないかなどとも考えてしまう。おてんとさん、おてんとさん……。

 農作物からカラスを遠ざけるためのものなのだろうが、園芸用品店などで売られているビニール製のカラスならばともかく、本物のカラスの死骸となると、むしろ遠ざかるのは人間のような気もする。その場所から車で20分ほどの距離には刑務所もあり(前を通ると、ちょうど出入口付近を行進する受刑者の姿が見えた)、まさか脱走した受刑者を近寄らせないために吊るしているわけではないだろうが、このご時勢にわざわざ本物を吊るしているのを目にすると、あれこれと勘繰ってしまいそうになる。死骸を拾ってきて吊るしただけだとは思うが、吊るすために殺したのであれば鳥獣保護法違反にもなるだろう。怖いから調べるつもりはないけれど。

 軽くネットで検索してみると、今でも本物の死骸をカラス避けのために畑などに吊るす人は稀にいるようだ。なかには、家の軒先に吊るして騒動になったケースもあるらしい。我が家にもカラスは頻繁にやってくるが、今のところ特に目立った害はない。厄介なところに糞を垂れていくのも、大抵は別の鳥である。できれば、このまま良好な関係を続けていきたいものである。