呑む阿呆に拾い集める阿呆

 郵便局に用があったのだが、隣にある小さな病院の駐車場にアルコール飲料の空き缶が10本ほどまとまって転がっているのを見つけ、しばらく観察してしまった。

 このクソ寒いなか、路上で酒盛りでもしたバカがいるのかと思ったが、バカでイキがった若者の酒盛りの跡としてはこじんまりしている気もする。それに、病院の前というだけでなく、すぐ近くには交番もあるため、さすがのバカでもこんな場所で騒ぐとは思えない。もしそこでバカな若者の酒盛りが本当に行われていたのだとしたら、それは相当に危険な連中であろう。そして、そんな連中を放置したのだとすれば、交番が存在している意味とはいったい何なのだろう。ひょっとして、自身の存在意義を見失ったお巡りさんが酒に逃避していたのだろうか。どちらにしても、私の精神衛生的にも良くない想像なので、希望的観測ではあるが「可能性なし」ということにしておきたい。

 では、いったいどんな人物が缶を散らかしたのか。病院の敷地内なのだから、入院患者がこっそり外に抜け出して酒をあおったというのも考えられる。しかし、この病院の主な患者層は老人であり、診察よりも世間話を目的としている者が大半という噂もある。外で酒など飲まず、待合室で雑談していれば良かろう。どうしても飲みながら話したいという老人がいたのなら、それはそれで治療が必要な類の方だったのではないか。もっとも、この病院で治療できるとは思えないが。

 あるいは、すっかり老人たちの集会場と化してしまったことを憂う病院関係者がやけ酒でもしていたのだろうか。これもまた治療が必要な案件であるが、上記同様、残念ながらこの病院の手に負えるものではないだろう。

 あれこれ考えてはみたが、結論が出るわけでもなく、私はとりあえず郵便局での用を済ませ、気づいてしまった者の定めとして空き缶を片付けることにした。しかし、ここ数年、空き缶のコレクションに手を染めてしまっているうえ、普段アルコールを嗜まないこともあって、この状況は宝の山に出くわしたようなものであり、常備しているゴミ袋に入れて持ち帰り(一応、カモフラージュとして中身の見えない大きめの買い物袋にしまった)、バケツにお湯を汲んで凍えながら外で空き缶を洗浄してしまっている私も何らかの治療が必要なのかもしれない(鬱を抑える薬は処方されておりますが)。

日本懐かしジュース大全 (タツミムック)

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