『空にかたつむりを見たかい?』 第31回

「サムデイ・ネヴァー・カムズ」

 

 

俺が最初に覚えてるのは、

オヤジにこう訊ねたことさ

「どうしてなの?」

なぜなら、

俺には知らないことがたくさんあったから

そしてオヤジは微笑みながら、

俺の手をとってこう言うんだ

「いつの日か、お前にもわかる時が来る」

 

そうさ、

俺はあらゆる甘えん坊たちにこいつを

伝えるためにここにいるんだ

早く学んだ方がいいぞ、

若い内に学んでおいた方がいいぞ

そうさ、

「いつか」なんて決して来ないってことを

 

○○○   ○○○   ○○○

 

「Someday Never Comes. Mmmm‐mmmm‐mmmm…」

「親父は大丈夫そうだな」

 塔子さんが歌い終わりかけた時、勝也さんが近づいてきた。

「なに? せっかくあゆむんを誘惑してるとこだったの」

 誘惑されていたらしい。

「なんだ? 通報したほうが良かったか?」

 勝也さんが笑いながらそう言うと、塔子さんは「あのこと、言っちゃっていいの?」といつもの意地悪そうな笑みを浮かべた。

「いや……冗談だよ」

 勝也さんの笑顔が苦笑いに変わる。どうやら、なにか弱みを握られているらしい。

「あ、そうだ。アユム君」

 塔子さんから逃げるように、勝也さんは僕に話しかけてきた。

「なんですか?」

「ダイチがイヌフラシの名づけ親を調べてるだろ? 俺さ、その名付け親と知り合いなんだけど、紹介してほしい?」