そして僕は途方にくれる

 蝦夷梅雨なのだろうか、しばらく太陽と共に過ごす時間が極端に少ない日々を送っている。吸血鬼のように日光に弱い私には好都合のようにも思えるが、残念ながら日光に弱いというだけで吸血鬼というわけではなく、どうやられっきとした人間ではあるため、日光を浴びない日々が続くのもまた健康には良くないらしい。あっという間に不健康の波が押し寄せてきてしまった。

 さらに気圧の変動にも弱く、頭の奥に鈍痛の種を潜ませたまま、ただでさえ険しい表情を浮かべがちなのに、いつも以上に眉間に皺を寄せる時間が長くなり、より一層他人を遠ざける顔へと変貌している気がする。もともと人が近づいてくることが稀で、人に近づいていくことは更に稀な私の場合、これ以上ソーシャルディスタンスを確保しても何の得にもならない気はするのだが、世界に合わない身体を持って生まれたのだと考えれば、これもまた自然の摂理なのかもしれない。とは言っても、それで納得できるほど人間はできていない(できていれば、こんなことにならん気もするが、今のところ打つ手もない)。

 このような健康状態と精神状態を反映してか、かつての生活圏内であった神奈川県の新百合ヶ丘駅構内でゆっくりと回転しながら浮遊する5メートルほどの大仏に追われる謎の夢を見てうなされる。大仏の後方ではハリウッド映画のような爆発が起きており、大仏が爆破しているのか、はたまた大仏も爆発から逃れようとしているのか。しかし、いずれにせよ巻き込まれるわけにもいかないので、私は夢にありがちな現実よりも若干鈍い速さで駅の中を逃げ回るのだが、そのうち大仏のいない前方でも爆発が始まる。すると突然、これもまた夢にありがちな場面転換が発生し、なぜか小さな舞台に現れたスーツ姿の津田寛治が「これはクロネコヤマトの陰謀だ!」と叫ぶ。特にクロネコヤマトに怨みなどないし、津田さんは好きな俳優なのだが、それまでの浮遊する大仏と迫りくる爆発のイメージ、そして湿度の高さによる寝苦しさとも相俟って、浅い睡眠状態の私には悪夢としか認識できなかった。

そして僕は途方に暮れる(25th ver.)(初回盤)(DVD付)

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  • アーティスト:大澤誉志幸
  • 発売日: 2008/05/07
  • メディア: CD