砂浜に首から下を埋められて出られずにいると、だんだん波が迫ってきて……というのは深刻なものから笑い話で済むものまで、割とよく聞く話ではあるのだが、かつて『世界まる見え!テレビ特捜部』で紹介された海外のレスキュー番組において、少々珍妙な例があった。
事件自体は、若者が遊びとして砂浜に埋まっていたら波が迫ってきて、砂はかき出すそばから押し寄せてどうにもならず、ついに呼吸も困難となり……という典型的な「ちょっとしたことがきっかけで深刻な事態となった」パターンではあるのだが、砂に埋まった理由が単に自分が楽しむためではなく、意中の女の子の気を引こうとしたためであった。
まあ、相手が陽気な人であれば、恋が成就するかどうかはさておき、砂に埋まってみれば笑ってくれるかもしれないので、それだけであれば珍妙というほどでもないのかもしれないが、救助された男性やその友人たちによると「当時、僕たちの間では、意中の女の子を誘う時、大きな穴を掘るというのが流行っていた」のだという。穴を掘ったけれど女の子には振り向いてもらえず、それならばと埋まってみせた、というのが事の顛末なのだ。
穴の中に誘い込むというアリジゴクのような手法だが、相手が蟻ならばともかく、どうしてこんな方法で人間の女性の気を引くことが流行っていたのだろう。成功例があったのだろうか。あったとしても、せいぜいバカさを面白がった最初の2、3人くらいだと思うのだが、流行っていたというのだから何とも間抜けな話に思える。しかも、それで死にかけたというのだから尚更である。
ちなみに、女性たちの間では意中の男性の気を引くため、大きな砂山を作って誘い込むのが流行っていた……なんて話は今のところ聞いたことがない。