異星人と飴玉

 アメリカの片田舎に住む老人が異星人からパンケーキをもらったという話がある。小説でも漫画でも映画でもなく、実話である。

 もちろん実話といっても、いまだ異星人の存在は確かめられていないわけで、あくまでもそのおっちゃんが言い張っていたというだけの話である。大法螺か妄想の類である可能性が高いが、詳細を知りたいのであれば「イーグル・リヴァー」「異星人のパンケーキ」といったワードで検索してみると良い。

 それにしても、異星人がパンケーキを所有していた理由というのは、異星人の存在以上に理解に苦しむ話ではあるが、気前良くプレゼントしてくれたことを考えると、きっと主食ではなくオヤツ的なものだったのだろう。我々、地球人もいつ異星人と出くわしても失礼がないよう、プレゼント用の飴玉をいくつか持ち歩いておくべきかもしれない。

 イーグル・リヴァーの事件は1961年のことであるらしい。クリント・イーストウッドケビン・コスナーを共演に迎えて撮った傑作『パーフェクト・ワールド』(1993)の舞台設定は1963年のテキサスで、この映画を初めて観た小学生時代の私は、ラスト近く、コスナー演じる脱獄囚が誘拐した少年のため、取り囲んだ警官たちに対し菓子を要求する場面で、銃を構えた警官たちのポケットからぞろぞろとキャンディが出てくるのを見て、当たり前のようにキャンディを常備している警官たちの存在を不思議に思ったものだが、食事としてべらぼうに甘そうなドーナツを頬張るアメリカ人の姿をその後も映画やドラマ等で何度も目にするうち、そういうものなのだろうといつの間にか納得していた。ゆえに、異星人がパンケーキを所有していた理由は謎でも、1961年のアメリカに住む老人が異星人のパンケーキを素直に受け取ったことはさほど不思議な話ではないと言えるのかもしれない。

 イーグル・リヴァーのおっちゃんは、異星人に水を渡したお返しとしてパンケーキを受け取ったらしいので、さらなるお返しとしてキャンディをプレゼントしたりはしていないのだろう。しかし、異星人から「キャンディくれないか」と言われれば、差し出せるだけの準備は自然と出来ていたかもしれない。日本において、常に飴玉を持ち歩いているのは、一部のおばちゃんくらいのものだから、日本人が異星人と仲良くなれる可能性は、アメリカ人よりは低い気がする。1960年代なら、尚の事である。

パーフェクト ワールド [DVD]

パーフェクト ワールド [DVD]

  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: DVD