記念樹の下には何が埋まっている

 「記念樹の下には歴代校長が埋まっている」という話を母校の七不思議の一つとして広めようと画策したことがあったが、荒唐無稽すぎて広まることはなかった。すでに廃校となってしまったが、私の知る限り、校長どころかタイムカプセルすら埋まっていない。

 小学6年の時の中村梅雀さんに似た校長先生は、プール用の更衣室(単なるプレハブ小屋)に作られた蜂の巣を自ら駆除していたが、成功したから良いものの、もし刺されてその場で命を落としていたら「校長、女子更衣室の前で倒れる」などと不名誉な書かれ方をした可能性もあり、やっぱり蜂の巣はしかるべき業者に頼んだほうが良いと思う。まあ、話を聞きつけて近隣の荒っぽい農家の皆さんが駆除にやって来たら、えらいことになっていたかもしれないので、早めに校長が処理してくれたからこそ今の我々の命があるのかもしれない。

 さて、タイムカプセルも勇気ある校長の亡骸も埋まってはいないが、雪国ならではというか、あくまで低学年の話ではあるけれども、冬になると給食の牛乳を積もった雪の中に埋めて凍らせようとする奴はたまにいた。だが、掘り返しているのを見た記憶がない。それでいて、雪解けと共に腐敗した牛乳が顔を覗かせていた記憶もない。ついでに言えば、「食い物を粗末にするな!」と叱られても良さそうなのだが、この件で叱られている奴を見た記憶もない。雪に埋められた牛乳たちは何処へ行ったのだろう。ひょっとして、歴代の校長たちがこっそり回収し、供え物として記念樹の下に紙パックごと埋められていたのだろうか。

 牛乳の栄養分をたっぷり吸収したおかげか、廃校となった今も記念樹は元気にそびえている。歴代校長や悪ガキたちのタイムカプセルでは、とっくに枯れていたことだろう。

桜の樹の下には

桜の樹の下には