そしてジャックもここにいる

 『帰ってきたウルトラマン』に「ウルトラマンジャック」という名前が与えられたのは、1984年の映画『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』かららしく、この映画も『帰ってきたウルトラマン』もビデオで知ることになった1986年生まれの私には、彼(ジャック)がいつからジャックになったのかは、その気になって調べない限りは知りえない情報であった。

 さて、ジャックの名付け親となった当時の円谷プロ社長・円谷皐が、どのような理由で命名したのかは知らないけれども、英語文化圏において名前のわからぬ存在に対して使われる仮称はおおむね「ジャック」である。日本で言えば「税金太郎」や「郵政太郎」の「太郎」といったところで、切り裂きジャックもバネ足ジャックも片目のジャックも日本では「切り裂き太郎」「バネ足太郎」「片目の太郎」になっていたはずである。「バネ足太郎」からは売れないお笑い芸人感が漂ってくる。

 しかし、そうなるとウルトラマンタロウウルトラマンジャックは名前の意味合いからすると同じということになる。もし、英語圏でタロウが先にジャックと訳されていたら、ジャックはジャックでなかったのかもしれない。だからどうしたという話ではあるが、一応ウルトラの歴史に関わる問題なのである。

 ところで、タロウに変身する東光太郎を演じた篠田三郎は日本人顔だが、ジャックに変身する郷秀樹を演じたのは団時朗で、アメリカ人の父親を持つだけあって彫が深い。まさか、ジャックという名の由来はここにあるのだろうか。ちょっと気になって、ここまで書いたところで更に調べてみると、どうやら「ウルトラマンジャック」は『ウルトラマンタロウ』の企画段階での候補でもあったらしい。西洋の童話の主人公に多い名前だったかららというのが理由で、そこから日本の童話の主人公に多い「タロウ」へと変更されたらしい。やはり、ジャックとタロウは西洋か日本かの差だったようだ。

 当時はハイジャック事件が多発しており、それを連想させてしまうというのが「ジャック」が没になった理由のようだが、「殺人鬼にもジャックが多いじゃないか」と指摘する者は、1984年になってもいなかったのだろうか。子供に夢を与えるウルトラシリーズの関係者にとって、殺人鬼なんて存在は蚊帳の外だったのかもしれない。まあ、だったらなにゆえツルク星人(『ウルトラマンレオ』第3話「涙よ さよなら…」および第4話「男と男の誓い」に登場する宇宙人)のようなトラウマ必至の凶悪殺人鬼が登場したのか、という話にもなるのだけれど。「ジャック」といえば「切り裂きジャック」を連想する人間からすれば、ツルク星人のほうがよっぽど「ジャック」らしいのである。

 

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