カエル側の人間

 ようやく涼しさを感じる日が目立つようになってきて、暑さに弱い私などは少しばかり表情が穏やかになりつつあるのだが、近隣の農業の方々はうかない顔をしている。私の機嫌が良いから不快になっているわけではなく(それもあるかもしれないが)、話によれば、どうやら今年はどの作物も稀に見る不作なのだという。まあ、これまでの天候のことを思えば容易く納得できてしまう。袋叩きに遭わぬよう、私もなるべく機嫌の良さは表情に出さないようにしておこうと思う。幸い、頻繁に他人と出くわすような生活は送っていない。

 出くわすといえば、天候にどこまで関係しているのかは分からないが、最近やけに小さなカエルを目にする。小さなバッタかと思ったらカエルだった、ということが何度もあった。カエルの苦手な人間にとってはたまったものではないだろうが、私は少なくとも人付き合いよりはカエル付き合いのほうが得意なので、カエルさんたちには元気に跳ね回って虫どもを飲み込み続けてほしい。虫付き合いは人付き合い並みに苦手である(バッタくらいなら良いのだけれど)。

 しかし、苦手なものがあるというのは仕方のないことだが、カエルに愛嬌を感じる者としては、カエルを「苦手で当然であるもの」のように語る人間に対しては若干の憎悪すら抱くことがある。「好きで当たり前」とでも言わんばかりに、あらゆる場所に勝手に混ざりこんでくるチーズやマヨネーズに対する憎悪に近いかもしれない。共に自分が独裁者になった場合に駆逐すべき上位候補となっている。私がそんな器でなかったことを感謝すべきである。貢物や金銭的援助などをしていただければ、なおよろしい。

 とりあえず、カエルと私の機嫌は上々なものの、近隣の農家の方々は殺気立っている可能性があるので、下手に刺激したりしないよう注意してほしい。

FROG RIVER [DVD]

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  • 発売日: 2005/10/14
  • メディア: DVD