うさぎは可愛いものだ

 天才に努力されると凡人は敵わないので「うさぎとかめ」みたいな話を有り難がるのである。あれは結局、やっかみによる勝手な憶測の話だ。だいたい、うさぎを悪者のように描いている時点で好きにはなれない(かめが嫌いなわけではないけれど)。

 たびたび目撃情報が寄せられる近所のうさぎたちであるが、その数は増加傾向にあるらしい。ベルリンの壁のはざまでユートピアを形成していたドイツのうさぎたちのように、ぬくぬくと平和に暮らしていってほしい。この土地の景観がピーターラビット風になったりすればなお良い。人間はこれ以上増えなくてよい。

 きつねやリスを目にする機会はこれまで通りといった感じだが、うさぎとは対照的に一時はうるさいほどにゲロゲロ鳴いていたカエルくんたちは姿を見せなくなった。うるさいほどだと少し困るが、私はあのユーモラスな姿も嫌いではないので、ちょっと寂しい。数年前に飛来しはじめた鷺たちによって食い尽くされてしまったのかもしれない。カエルを見かけなくなった途端、鷺も同じように見かけなくなったことであるし。

 鷺が原因なら諦めもつくが、いかにも頭の悪そうなエンジン音とタイヤ音を轟かせて走り去っていく2台ほどの車によって動物さんたちが姿を消すようなことになれば、車の破壊を本気で計画せねばならなくなる。さすがに近所でドリフト遊びなどするほどの阿呆ではないようだが、奴らの音が聞こえるたびに殺意は沸々と湧き上がっている。ドライバーの見当はついているので、私に陰惨な事件を起こさせないよう、2021年はおとなしくしていてほしい。