あしながおじさんの足が短くてもがっかりしませんか?

 立て続けに雑誌の懸賞が当たっている。ツキが回ってきたのか、残りの人生の幸運を使い果たしたのか。前者だとは思えない厄介な性分なのは今に始まったことではないが、さすがに使い果たしたとまでは思いたくない。しかし、結構な額を前借りしてしまった気分にはなっている。

 当選した懸賞のひとつは、とある方のサイン入り生写真で、たいへん嬉しいのだけれども、御本人に「こんな人に当たっちゃったのか……」なんて思われたらと考えると自殺したくなるので、誰の写真が当たったのか公にして喜びを表明するということもできない。そんなことを考える人だとは思っていないけれども、さすがにこんな私が相手ではとも考えてしまう。目の前の幸福を信用できず、石橋が壊れるまで叩き続けかねない。だから、二・三歩ほど下がった安全圏で噛みしめられるだけの幸せを味わうにとどめる。

 新型コロナウイルスの影響で「会いに行けるアイドル」を謳ったアイドルグループでさえ直接交流するのが困難になっているが、私からすると憧れの人に会えないなどというのはコロナ禍に限ったことではない。アイドルであれアスリートであれアーティストであれ、応援が何よりの励みという言葉に嘘はないと思うけれども、「さすがにあんたから応援されても……」と言われても仕方のない人間も存在するだろう。自分がそのうちの一人ではないと信じきることができれば良かったのだろうが、残念ながらそう思える人間にはなれなかった。『街の灯』の花売り娘だってチャーリーの姿を見てちょっとがっかりしていたじゃないか。自分はチャーリーよりも惨い反応をされると考えても不自然ではないはずだ。

 相手の認知できない場所から相手の利益にはなるだけの応援を行う。これがあしながおじさんにもなれない「あしなしおじさん」に許された生き方なのかもしれない。

街の灯 City Lights [Blu-ray]

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あしながおじさん (新潮文庫)

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