僕らが石を拾う理由

 『よつばと!』の最新巻(15巻)を読んでいたら、ふと映画学校卒業直後に結婚し、お子もできた同期生が「よつばみたいな娘ができたらいいなあ」と今や懐かしきmixiで綴っていたのを思い出した。しかし、その同期生はそれから2年ほど経った頃、風香の便り……ではなく風の便りによって「離婚したらしい」と聞かされた。お子さんがよつばのように育っているのかはわからない。

 さて、15巻に収録されている記念すべき第100話「よつばといし」(表紙に描かれているのも、この回の風景だろう)は、よつばたちが遠征までして石拾いに行く回だが、同じ「石を集める漫画の主人公」でも悲愴感溢れる『無能の人』の助川助三と違い、なんと幸せそうなことか。私も幼少期より石を集める癖があるが、どうしたわけか当時から既に『無能の人』的悲愴感が漂っていたという説がある。残念ながら、子供であれば無邪気に見えるというわけでもないようである。

 現在の私は、いよいよ掘立小屋に籠って「銘石フェア」などと謳い価値のなさそうな石を売るくらいしか道がないのではないかと指摘する声もあり、着々とつげ義春世界の住人になりつつある。今日も「赤色エレジー」など口ずさみながら、昔のガロの匂いを漂わせる。

よつばと!(15) (電撃コミックス)

よつばと!(15) (電撃コミックス)

 
つげ義春: 「ガロ」時代

つげ義春: 「ガロ」時代

  • 作者:勉, 正津
  • 発売日: 2020/11/25
  • メディア: 単行本