ウルトラマンの怪獣図鑑には「ナマハゲ」が載っている。秋田名物のあの「ナマハゲ」である。ウルトラシリーズのファンなら周知のことだろうが、怪獣(怪人)として登場したことがあるのだ。『ウルトラマンA 第38話「復活!ウルトラの父」』でのことである。
私が幼少期に読み込んだ『ウルトラマン大図典』(講談社)の紹介文には「伝説怪人 ナマハゲ/身長:2m/体重:75kg/出身地・出現場所:秋田県~東京近郊」とある。身長に対して少々体重が軽いように思えるのは、やはり神の使いだからだろうか。
さて、神の使いであるナマハゲがウルトラマンの世界に、それも「怪人」と称されてまで何故姿を見せたのかというと、「日本の神をあがめず、クリスマスにうかれる日本人をこらしめるために出現」(『ウルトラマン大図典』より引用)という右翼団体のような理由であった。ちなみに、『ウルトラマンA』では、獅子舞の面をいたずらした少年が怪獣化(獅子超獣シシゴラン)する回もある(第41話「冬の怪奇シリーズ 怪談!!獅子太鼓」)。どちらも脚本は故・石堂淑朗氏によるものである。
まあ、日本古来の神々がないがしろにされることに関しては、どちらかといえば左寄りな私でも非常に心苦しく感じる面もあるのだけれど、このナマハゲ様が連れてきた怪獣(『ウルトラマンA』に登場する怪獣は基本的に「超獣」と表記される)の名前が「スノーギラン」で、これは右翼団体の街宣車のカーステレオから「Born in the U.S.A.」が大音量で流されているようなものではなかろうか。
『空想非科学大全』にて柳田理科雄も疑問を感じていた設定だが、TUBEの「シーズン・イン・ザ・サン」を垂れ流す街宣車を見かけたこともあるので、ひょっとしてそのくらいのことは許容範囲になっているのだろうか。『A』のナマハゲ様の表記も、あくまでカタカナの「ナマハゲ」であることだし。
しかし、最終的にはウルトラマンAに退治されて(ナマハゲはウルトラの父に退治された)しまった。敗因が思想に一貫性がなかったためかどうかはわからない。