筋肉痛に耐えて歯医者さんに褒められる

 おそらく人口が少ないゆえに、思ったよりも早くワクチン接種券が届き、予約に関しても苦労している方々に知られれば張り倒されかねない呆気なさで完了してしまい、なんだか申し訳ない気分にもなりつつファイザー製ワクチンの1回目の接種を終えた。

 接種場所が小児科病院だったためか、やたらと優しげな女性看護師に案内され、別の病室から聞こえてくる幼児の泣き声とあやす医師・看護師・親たちの声によって、通院と入院が日常だった幼き日を思い出し、郷愁のような気分を味わいながらの接種だったが、その精神状態は特に過剰な副反応を招く結果にはならず、接種部分を中心とした軽い痛みが2日続いただけで済んだ。歯磨きのやり過ぎで頻繁に利き腕に生じる痛みによく似ており、なんならその症状よりは痛みが少ないくらいで、不安に感じることもなかった。

 厄介だったのは、注意書きにもあるように、接種部分を入浴時にこすらないようにしなければならないのだが、採血時の注射よりも傷口が小さいため、保護パッドを剥がしてしまうとどこが傷口だかわからなくなり、結局左肩から二の腕にかけては慎重に素手で洗うことにしたのだが(注射した部分は清潔に保つ必要もある)、慎重になりすぎて「長風呂は控えてください」という看護師さんからの忠告は守ることができなかった。ごめんなさい、私は不衛生によって健康を害するよりは、洗い過ぎによって健康を害する方を選ぶ人間なのです。

 さて、接種自体はこのように特に問題もなく進んだのだが、30代の私にも接種券が届く地域ではありながらも、まだ高齢者以外の接種は進んでいないようで(働いている人たちは、都合の良い日時をおさえるのも大変なので、ワクチンへの忌避などなくても、なかなか順調にはいかないはずだ)、基礎疾患の有無や何かの事情で役所へ早めの接種を頼んだのかどうかなどを少し念入りに訊かれた。実際、周りの接種者と思われる顔ぶれも高齢の方ばかりで、幸い妙な因縁をつけてくる人はいなかったものの、居心地が良かったかと言えば嘘になる。人に怯え過ぎだと言われればそれまでだが。ただ、待合所にテレビがなかったため、私としては憎しみの対象でしかなくなっているオリンピックを目にしなくて済んだのは幸いである(前日に歯科医の定期健診を受けたのだが、待合所のテレビでオリンピックの中継が流れていたのが不快だった)。この状況下で、さらに交通規制などによる市民生活への迷惑までかけて開催されている祭りに対しては、仮に個人的に応援したい選手が好成績をおさめたとしても(まあ、特に思い入れのある選手などいないけれど)、浮かれる気持ちにはならないし、浮かれている者を目にするのも気分の良いことではない。